三月三十日
大学通りからさくら通り、矢川通り。右手に肉まん左手にビールで歩いた。やっぱり国立はいい街だ。新歓まっさかりの学生たちが遠くに見えた。矢川駅に着くころには、さっきまで真っ青だった空に桜の花の色がとけだしていた。自分にも色があったらとけたかった。
明日で社会人一年目が終わる。今日の時間に感謝して、明日も仕事をがんばりたい。
三月二十七日
事情あって今日のピッグライブはキャンセルになった。来てくれるはずだった秀吾ごめんなさい。いくらお金をつんでも人がいなければライブはできない。対バンのステージがまぶしくて悔しかった。幸いなことに次回が四月十日に決まったので、そっちはがんばりたい。やっていないのに、まるでライブをやった後のように疲れた。おやすみなさい。
三月二十六日
石川の地震。母親が冷蔵庫の下敷きになって病院に運ばれたという知らせを聞いて、がく然とした。父親の冗談だったとさ。まったくもうだ。でもお一人亡くなったらしいから、他人事ではないな。
今日はららぽーとで妹の誕生日の贈り物を買った。人のために物を選ぶのは楽しい。あと四月から使うスケジュール帳も購入した。自分の状況は何も変わらないけど、まったく新しい生活を始める人もいる。そういう人の気持ちに寄り添って、なんとなく切ない気分に浸りたいのかもしれない。
三月二十三日
朝、寝坊して遅刻した。たくさん夢を見て、ものすごく気持ちよく寝てしまっていた。跳び起きてあわてて支度をする間、「春眠暁を覚えず」の文句が頭の中をぐるぐる回っていた。くれぐれも気をつけたい。
今日は一橋の卒業式だったようだ。めでたい。来週あたり国立の桜を見に行きたい。
三月二十二日
昨日は明けからバンド練。スマイルは久々の全曲練をした。そしたら、これが三時間(ただし荒井が二十分遅刻)あっても全曲通せない。記憶があいまいな曲で何度か立ち止まったのもあったが、それにしてもえらい曲数。はじめは面白かったけど途中からは背中のけぞって必死だった。バンドをやめる時は全曲音源に収めたい。
そして次のライブが決まった。懐かしい24ウエストで、しかも夜間の企画というのがいい。がんばろう。
三月十九日
英国マダムに「ナイスヘアー。グレイトヘアー。」とほめられた。そのまんまな表現でしかも真剣な顔して言うもんだから面白かった。ありがとう。
三月十八日
快晴の気持ちよい日、着なくなった洋服を売り物にして津田沼駅前のフリマに出店してみた。地域の小さな催しなので予想はしていたが、出店者もお客さんも年配の方ばかり。周りに配慮してビールはやめといた。こんなで売れるんかいと思ったが杞憂だった。
並べた洋服のセンスを通りすがりのおばさんがなぜか絶賛してくれた。また別のおばさんは昔アイドライズ(富山の服屋さん)で手に入れたシャツを狂喜して買っていった。おばさんたちにとっては店やブランドはどうでもいいのであって、それが面白い。今や自分もそっちの側の人間だ。フリマのそばでダブルダッチのパフォーマンスをしていたおじさんとお姉さんが、買ったブルゾンとパーカーをその場で着て縄跳びしてくれたのがうれしかった。そんなわけで、準備した品物の七割がた売れた。いくらか儲けたお金で、おとなりのおばさんが売っていた手作りのビーズのブローチを買った。
いい休日だった。仕上げに帰宅後のんびり夕食を作って食べて、ビールを、今度は遠慮なく飲んだ。うまかった。
三月十七日
今朝の出国はすごかったー。人の列が何層にもたたまれて、ミルフィーユのようだった。無論おいしそうではなかった。一時間二時間と入り続けるうちに疲れてきて、客への配慮がなくなっていく。この過程がどうしようにも抵抗できず無力感いっぱいで悲しい。さわやか行政がこんなことではいかん。しっかりやりたいと思う。
明日は日曜であり休日。よくわからぬうちに津田沼のフリーマーケットに出店することになった。販売業への初進出。のんびりビールを飲みながら楽しみたい。
三月十五日
煮るしかない。そう思い至って仕事帰りに大根とあらを買い、ひたすら煮た。それに野菜たっぷりの味噌汁と酢の物と納豆を加えた夕食。ビールは我慢。久しぶりにちゃんと作った。不摂生で疲れ気味だった胃にしみた。料理は落ち着く。でも目的であって手段ではない。そのうち和食の料理本を買おうと企んでいる。
桜の開花予想はおよそ一週間後らしい。でも今夜は東京で史上最も遅い初雪を観測するかもしれんらしい。わりとニアミスだ。同じ景色に桜と雪がいたらさぞ素敵だろう。などと妄想するのは勝手だ。でもときに現実と区別がつかなくなるくらい、自分の妄想は勝手らしい。
三月十四日
ホワイトデー。今日までに、あげるべき人にはほぼあげた。もらっとらん人にあげたっていいじゃない。こういう機会に、世話になっている人に感謝の気持ちを表すのはよいことだ。と勝手な充足感に浸る。
社会人になってフットワークが軽くなった。890円の切符を握って改めてそう思った。肉体は簡単に壁を越えられても、頭ん中はそうはいかない。本来は逆だろうか。何でもいいからライブがしたいな。何もかもをこなごなに。
三月十一日
デンジャラのあとが連休で助かった。何するでもなく、対バンしたバンドの音源をかわるがわる聴きながら二日間ぼーっとした。食べないと簡単に頬って痩けるんだなあ。そんなんで生きていることを実感した。誰かとすごく話したい。とりあえず明日からまた仕事がんばりたい。
三月十日
朝まで飲んだあと、五時すぎに東京行きの総武線各停に乗った。気がつくと八王子にいた。いっそ荒井家に行こうかと思ったが、間違いなく寝ているのでやめた。四時間近くかかって帰宅した。十枚ほど残っていたはずのカメラのフィルムが、撮った記憶もないのにゼロになっていた。現像するのが楽しみだ。
ゆうべはデンジャラ祭りだった。どのバンドもかっこよかったー。桃尻セシリアとはぜひまた対バンして、お話したい。買って帰った音源がこれまたすごくかっこいい。シェリーズはいつになく優しい音が出ていて、穏やかな気持ちになった。毎度のことだがほんと、一生見てたいと思った。だから一生続けておくれ、頼む。マークスマンを初めて知ったのは、まだ富山にいた頃だった。ライブではなく、秀吾に見せてもらったライブビデオで。自分が東京でバンド組んでまさか対バンすることになるなんて、思いもしなかったろう。ライブのさなかそんなことを考えて、改めてうれしさがこみ上げた。ミートイーターズのリハは、奪い取るつもりで弾こうと思ったものの百年早かった。でも楽しかったな。本物のレミングは骨の随まで染みて、勝手に泣けた。やっぱり大好きなのだ。自分たちはどうだったろう。何も考えずにやってあまり覚えとらんけど、それはもう楽しかったんだと思う。でももっとやれたろうとも思う。だから次はもっとやってやりたい。
デンジャラを通して、たくさんの夢が叶っている。出てくれたバンドはみな追いかけたい背中だ。まさに最強かつ最愛の対バンの皆さん、ありがとうございました。観に来てくれた家族や高校の友達、軽音の先輩、すべてのお客さん、ありがとうございました。急遽CDのジャケットを書いてくれたよっちゃん、本当にありがとう。他にも誰かにお礼を言わねばならん気がする。ありがとうございました。心から楽しくて幸せでした。もっといいライブができるように精進します。
とりあえず次のライブ決めて、練習して曲作って練習しよう。年明けに三月解散を一瞬考えたのは、そういう季節だからかもしれない。いつできなくなるか分からないから、それまではめいっぱいやりたいと今は思っている。
三月八日
今日は夜勤。とりあえず四月以降も成田にとどまるらしいということが判明した。率直に言って、よかった。仕事に対する謙虚さを忘れずに精進したい。
昨日今日の追いコンに行けなかったことは、すごく大きな悔いだ。ブース入りながら想像をふくらませて勝手に涙目になっていたら、客のおばさまに「花粉症ですか?」て心配された。違うんです。融通のきかなさも涙もろさもまるで社会人だ。ただしかし、そんなことは明日のデンジャラ祭りでは関係ないのである。空回っていいからがっつりやりたい。やろうぜ。おー。おやすみなさい。興奮して眠れない。
三月三日
そんなわけで、偶然にも新婚旅行から帰ってきた同期の審査をしたわけだ。こないだの二次会以来。にやにやするのを抑えるのに精いっぱいで、でも全然抑えられませんでした。もう十分幸せそうやけど、お幸せに。やっぱりうらやましいな。
遅番のあと、新宿でゼミの面々と飲んだ。二時間くらい。懐かしかった。でも一年くらいではみんな変わらんもんだ。安心した。今度はもう少しゆっくり話せるといい。
そしてこれから渋谷でピッグ深夜練。明日は夜勤。おれ今、ちょっとタフだぜ。ちょっとタフな自分にちょっと酔ってるぜ。ビールのせいかな。まあいいや、おやすみなさい。
三月二日
イオンで買い物と読書をした帰り、どこぞの政党のえらい人が近所に講演に来たらしく、夕暮れの駅前は警察官だらけで物々しい雰囲気だった。周りを走る団体の車からは時折怒号も聞こえた。やめてけれ。よくわからんけど、全体的に、誰のための何なんだろう。怖かった。
夜は豚汁を作った。心は穏やかだった。久々に食べた塩鮭がうまかった。
三月一日
夜勤明け、窓越しに飛行機を眺めながらいただく回転寿司は最高のぜいたくである。月に一回も行けないけど、店員のおばさんに顔を覚えてもらえたらしく、割引に必要な身分証の提示が要らなくなった。やった。
こないだ出かけた結婚式の二次会はよかった。場が華やかだった。いくらがんばっても、新郎新婦の喜びや不安を推し量ることはできない。自分がそうなって初めて分かるんだろうと思う。でももうしばらくは誘われる側でいたいかもしれない。というのは負け惜しみかもしれない。まあなるようになるわな。
久しぶりに、せっせと音とりをする。人のフレーズはその人ならではのものだから、そもそもコピーなんてできるわけないのだけど、だからこそがんばって真似しようとするのは楽しい。