第十四章 〜 S極とN極 〜
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「聞いてるのか、せいたろうってば!」
「・・・えっ、なに?」
「そこのロッカー開けてみ!」
「ここ?」
「そうそう、横にあるロッカー。2番目、2番目。」
2番目のロッカーには「あこぎ」と名前が小さく貼ってあった。開けると、古そうなギターが入っていた。
「これ・・・」
「それさ、練習用ってか、皆が授業とかで使うギターなんだよ。アコギなんだけどさ。ちょっと持ってきてよ。」
初めて持つギター。以外と大きくて、それに・・・重い。弾くところに、小さな傷が沢山ある。光に当たってキラキラと沢山見える・・・。なにか引っかかる。なんだろう、何か引っかかる。
持っていくと、いつきが抱えて弾き始める。ギターを弾く人を身近に初めて見た僕は単純にかっこいいと思った。
「ベースと違うから、ちょっとしか弾けないんだけどね。」
そういうと、ピストルズの曲に合わせてギターを弾いた。間違ってたり、遅くなったりしてるけど、かっこよかった。湿気で暑い音楽室なのに、僕は見入っていた。暑さなんか感じなかった。