第十四章 〜 S極とN極 〜
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ホームルームが終わって、皆がそれぞれ掃除をしたり友達と会話を始めた。磯野さんに話しかける人はいない。皆がどう接していいか、まだ分からないようだった。
机を後ろに並べて僕と磯野さんが教室を出る時に、ちょうど、いつきが来た。
「お待たせ!磯野さんに話してくれた?」
「うん、大丈夫だってさ。」
「よかったぁ、三人で行った方がいいし、何より実際にドラム見てもらわないとだしな。」
三人で職員室へ向かう間にも僕は考えていた。どうして磯野さんは知り合ったばかりなのにバンドをやるって言ってくれたんだろう。音楽が好きなんだろうか。磯野さんのことはまだ何も知らない。何が好きで何が嫌い、何が得意で何が不得意なのか・・・。
「おい、せいたろう何してんだよ、行くぞ。」
「あ、ごめん」
職員室へ入るとお爺ちゃんが隅のほうで座っている。
いつきが先頭で進んで行く。先生たちもまだ磯野さんに対して慣れていないのか、どの学年の先生も振り返って見ている。