第十四章 〜 S極とN極 〜
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「磯野さんってドラムやったことあるの?」
『 ないです。楽器もはじめてです。』
「うそ!すごい叩けてたよ。かっこよかったし。」
「うん、僕もそう思った!凄かったよ、初めてなのにちゃんとリズムになってたし、いつきもギターすごい上手かった!二人で、バンドみたいになってたよ!」
「俺はベースだって言ってるじゃんか。シドみたいになりたいんだ。それにギターはせいたろうだろ?」
「ギターならともかく、歌うなんてやっぱり恥ずかしいよ。いつき歌えばいいじゃんか。」
「違うんだなぁ、俺が歌ったんじゃ駄目なんだよ。他でも無い、せいたろうが歌わないと意味無いんだよ。」
「なんでだよ、僕なんか目立たないし、今まで歌ったことも無いんだぞ?」
「まだ気付いてないんだよ。お前がどれだけ何かを持ってるかってこと。言ってるだろ?絶対、ボーカルはせいたろう。お前しかいないんだ。」
「やめてよ、僕は何も持ってないよ。こんなのが歌ってたんじゃ有名なんかに絶対になれないよ。」
「やってみなきゃわからないじゃんか、磯野さんだってドラムしてくれるんだし、せいたろうだって始めてみたら何か掴めるかもしれないだろ?3人でさ、練習したり、歌詞考えたり、メロディー考えたり、すっげぇ楽しそうじゃん!バンドって感じがしてさぁ!」
「それはそうだけど・・・」
ドラムセットに座っていた磯野さんがメモ帳に何か書いて僕らに見せる。