第十四章 〜 S極とN極 〜
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第十四章 〜 S極とN極 〜
教室へ戻ると、皆がプールの準備をし始めていた。
僕らの学校は共学だけど、共学だから?男子、女子、一緒に体育をする。もちろん、プールだって一緒だ。着替える時には男子は1組、女子は2組で着替える。
中には女子と一緒で喜んでいる男子もいたけど、僕は何にも気にならなかった。僕はまだ、女子が気になるほど、恋も何も知らなかったんだ。
「そういやさぁ、磯野さんプール参加しないって言ってたけど、なんなんだろうな。」
「・・・僕に分かる訳ないよ。出来るなら僕だって体育は見学したいんだ。」
「はは、そうだな、せいたろう体育苦手だもんな。さっきさ、磯野さんて、プールじゃなくて体育って言ってなかったっけ?プールだけじゃなくて体育ってことだろ。体弱いのかな、なんてったってあの髪色だもんな。」
「うーん、しゃべれないのも何かあるかも知れないよね。」
お互い、なんとなく理由を考えていた。でもそれは磯野さんに失礼になるような気がしたし、知らないのに話をするのが、まるでクラスの女子のようで僕はイヤだった。それはいつきもきっとそうだったと思う。自分がされていたように。
そんなことを話しながら着替えて校庭を渡ってプールまで歩く。皆がゴムのタオルを巻いて、まるでクラゲのように歩いていくのがおかしく見える。でも、磯野さんが歩いていく姿は、他のなにより不思議だった。でも、なぜか、その姿は誰よりも自然に見えた。テクテクと歩いていく姿。女子がまとまってプールへ向かっていく。その後ろの方から一人、灰色の女の子がついてきていた。