第十四章 〜 S極とN極 〜
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「先生、ちょっと話があるんですが、今時間いいですか?」
「もちろん、どうしたんだね?」
「僕ら、三人でバンドっていうか音楽をやろうと思ってるんです。でも部活に入っていないんです。来年の文化祭を目指してこれから練習したり楽器を借りたりしたいんですが可能でしょうか。」
僕と磯野さんは、二人でただ、いつきとおじいちゃんのやり取りを見ているだけでよかった。変わった、と言うより、今のいつきは何でもやってくれる、本当のリーダーだった。少なくとも僕にとっては。
「音楽?・・・ということは、音楽室を使ったり、楽器を使ったりということかね?」
「そうです。ギターとドラムを借りようと思ってるんです。」
その言葉を聞いた時に、「僕はまだ・・・・」という言葉が口から出かかったけど、話した瞬間に、二人に迷惑がかかると思って言うのをやめた。
「・・・そうか・・・それは私だけの意見では難しいことだな。何しろ部活以外で音楽室を開放したことが無いからなぁ・・・明日の職員会議で話してみることにしよう。磯野とも仲良くしてくれているし、助かるよ。」
「いえ。それと、今日なんですが、音楽室を見学してもいいですか?磯野さんにも改めて学校の案内もかねてなんですが。」
「それはかまわないよ。カギは開いているから案内してあげなさい。」
「ありがとうございます。」
僕らはお礼を言って職員室を出た。