第十四章 〜 S極とN極 〜
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「こんな感じ。でもさ、俺たちがするのってオリジナルだから簡単なコードでいいんだよ。自分だちがいいって思うメロディーを弾いて、自分たちが思うリズムを叩けばいいだけなんだ・・・簡単だろ?」
「・・・うん。」
「・・・あっ!」
いつきがゴミ箱に目をやる。すると、そこには大分擦り減っているスティックが捨てられていた。
「やった、吹奏楽のヤツ等が捨てたスティックあんじゃん!まだ使えるよこれ!磯野さん、これ持ってみて。」
磯野さんがスティックを持つ。女の子とドラム。細い磯野さんがドラムセットに座っていると、余計に細さが目立った。
「足は、そのペダルを踏んでさ、右足がそこで、左足が・・・・そう、そこ。さっき言ったハイハットを右手で・・・クロスするように・・・叩いてみてよ。」
チッチッチ・・・タンッタンッ・・・
「そうそう、それで足入れるの。ドンドンって」
チッチッチ、ドンドン、タンッタンッ、
小さい音で、無茶苦茶なリズムだったけど、磯野さんはドラムを叩いた。いつきがそれに合わせてギターを弾いた。かっこいい、二人の演奏を見ていると心からそう思った。