第十四章 〜 S極とN極 〜
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「きょ、今日さ、帰り時間あるかな・・・おじいちゃん、あっ、先生のあだ名なんだけど・・・その・・・バンドのことでさ、先生のところ行ってドラム使っていいかとか聞こうと思ってるんだけど、これる?そのあと、音楽室行ってドラム見たりしようと思ってるんだけど・・・あっ、いつきも一緒だよ、もちろん!」
下を向いたり、目だけで磯野さんを見ながら話しかけた。いつだって僕はこうだ。自分の意思で話しかけても、誰かのことを出したり、自分の意見じゃないように話してしまう。そんな自分がずっとイヤだった。磯野さんはしばらく下?前?を向いていたけど、ポケットからメモ帳を取り出してくれた。内心は授業の時みたく、反応してくれないのかと思っていたから凄く安心した。
『 いってみます。』
机のハジにノートを移動させながら見せてくれた文字にはそう書いてあった。
他の誰も気付いていない僕と磯野さんだけの会話。雨で濡れたノートは変わらず、変形していて使いにくそうだった。