小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十七章 スメル ライク イブ

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第十七章 〜 スメル ライク イブ 〜
P.9 

「かんな!お前、こんな時間まで何やってたんだ!晩御飯の食材は買いに行ったのか?」

新聞受けに入っている夕刊を取り出してこちらを見た時、僕と目があった。それは間違いなく、磯野さんの父親。お父さんが言ってた通り、僕の父親とは全く逆。細いのに、ランニングを着ていて、ダブダブだけど、芯はしっかりしている、本当に僕のお父さんとは違うタイプだった。

「・・・友達と一緒だったのか。初めまして。かんなの父です。友達がいるなんて聞いていなかったら驚いたよ。」

「は、は、初めまして。僕、野崎せいたろうと言います。あの、あの・・・磯野さんとは同じクラスで・・・」

「そうか、最初だから送ってきてくれたんだね。ありがとう。暗くなってきたから、野崎くんも早く帰りなさい。今日は娘を送ってくれてありがとう。」

「い、いえ・・・そんな・・・・」

その時、チラっと磯野さんを見ると、ノートはもう持っていなかった。そして、かすかに震えているように見えた。いや、震えていた。もう夏休み前で暑いのに、震えている。

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