第十七章 〜 スメル ライク イブ 〜
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「お、お待たせ。あの、お母さんいるけど、特に気にしないでいいから・・・あの・・・ぴ、ピストルズ聴くだけだし、き、気にしないでいいから。」
僕の方が緊張しているのが誰から見ても分かったと思う。初めて友達を家に連れてきた。しかも女の子。そして相手は磯野さん。僕はどうしていいか分からずに、ただ、無我夢中だった。
「た、ただいま。磯野さん、こ、ここにヘルメットおいといてね。あ、す、スリッパ・・・お母さん!スリッパどこ!」
「おかえりなさい、いらっしゃい、初めまして。息子がお世話になっているみたいで。あの、前に貸したせいたろうの傘、ごめんなさいねぇ、あの傘ね・・・」
「こないでいいよ!そんなことより、す、スリッパどこにあるの?前におばさん来た時に使ったじゃん!」
「す、スリッパ?たしか・・・」
そう、我が家には友達を連れてくるという習慣が今の今まで無かった。来るお客さんと言ったら、お父さんの仕事の同僚か親戚のおばさんくらいでスリッパすら出さない、田舎の嫌なところが一番出ている。そして、玄関の下駄箱の奥から、変形してしばらく使っていないスリッパがようやく出てきた。
「こ、これ、使って・・・」