第十七章 〜 スメル ライク イブ 〜
P.6
「終わった!じゃぁ、な、流すよ?」
少しだけ大きな音で再生を押す。セックスピストルズが流れ始めた。チラチラと磯野さんを見ても特に大きな反応は無い。というか見えない。一曲、3分がどれだけ長く感じたか分からない。ただ、カセットデッキと磯野さんを交互に見ている自分がいた。そして二曲目に入る。また3分が過ぎていく。いつ、話しかければいいんだろう・・・このテープは30分。片面終わるまでこのままでいいのか?話しかけていいんだろうか。でも、曲の途中だし。そんなことを考えて4曲目に入る頃。
「あの・・・こんな感じなんだけど・・・どう?かっこいいかな・・・
なんかね、皆髪の毛ツンツンに立っててさ、白い服に色々ついてるんだ。歌詞は僕はわからないけど、真面目らしいんだ・・・ドラム、後ろの方で聴こえるでしょ?リズムとってるんだって・・・で、出来そう?」
正座をしながら磯野さんがメモを書き始めた。いつきの趣味なのに、なぜか僕が緊張している。もし、気に入らなかったらどうしよう。これが原因でバンド辞めたりしたらどうしよう。もう、僕にはピストルズの曲は全く聴こえていなかった。