第十七章 〜 スメル ライク イブ 〜
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「い・・・いその・・・さん・・・」
戸をゆっくり開けると、散らばった茶碗を片付けている姿が見える。髪の毛が寝癖のように乱れていた。
「だ・・いじょうぶ・・・?」
僕が声をかけると、ゆっくりと立って、玄関へ来る。髪の毛の隙間から顔が少しだけ見える。目の横が赤く見える。それは、今出来たばかりの赤い色。玄関の横に置いてあったバッグからゆっくりとノートを取り出す。濡れて変形したメモ帳。その中のあるページを開いて僕に見せる。前に見たことのある文字。
『 自分を変えたい。 』
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