第十六章 〜 グリーフ 〜
P.12
「また学校で変なこと言ってごめん。今日はゆっくり家で安静にした方がいいよ。明日は日曜日だし、一日休めば腫れも引くと思うよ。」
石を蹴りながら必死に感情を隠そうとしてた。いつもの自分。こんな僕がいつきと磯野さんと一緒にバンドなんて。しかもギターを弾きながら唄を歌うなんて。
僕の家が見えて来たころ。最後の石を水路へ蹴った。
「じゃぁ、磯野さん、げつよ・・・」
『 野崎くんの家で聴いて本当にいいんですか? 』
磯野さんのメモでまた僕の心臓は一層と早く動き始めた。全速力で走った時とかじゃないのに、同じくらい動いていた。
それが何なのか、その理由が何かなのか、分かるのはずいぶん先のこと。気付けたのは本当にずいぶん後だった。もっと早く気付いていれば何か変わっていたのかもしれない。