小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十六章 グリーフ

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第十六章 〜 グリーフ 〜
P.5 

「これ!こ、氷!冷やさないと駄目だよ!」

氷を包んだタオルを無理やり渡すと、ヒザに手を当てて息を整える。湿度のせいもあって、もう汗が吹き出ていた。落ち着いて見上げると、ちゃんと顔にタオルを当てていて安心した。

「・・・ど、どう?あっ、タオル、汚くないよ?洗ってあったヤツだし、氷だって何も使ってないヤツだよ・・・」

ありがとう ころんで打っただけです 渡辺くんには言わないでください

「いや、言わないけど、大丈夫なの?」

カセットデッキも その時に壊してしまったんです 今日謝ります

「あのカセットデッキ壊れちゃったの?」

そう言った瞬間、自分がなんてひどいことを言ってしまったんだって、また思った。

「あっ、で、でも、しょうがないよ。顔以外は大丈夫なの?すごい腫れてるけど」

だいじょうぶ

片手で顔を抑えているから、書くたんびにしゃがんで大変そうに書いてくれていたけど、僕は知りたくてしょうがなかった。

「本当に大丈夫?無理に学校行かなくてもいいんじゃない?痛そうだよ・・・」

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