第十六章 〜 グリーフ 〜
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「これ!こ、氷!冷やさないと駄目だよ!」
氷を包んだタオルを無理やり渡すと、ヒザに手を当てて息を整える。湿度のせいもあって、もう汗が吹き出ていた。落ち着いて見上げると、ちゃんと顔にタオルを当てていて安心した。
「・・・ど、どう?あっ、タオル、汚くないよ?洗ってあったヤツだし、氷だって何も使ってないヤツだよ・・・」
『 ありがとう ころんで打っただけです 渡辺くんには言わないでください 』
「いや、言わないけど、大丈夫なの?」
『 カセットデッキも その時に壊してしまったんです 今日謝ります 』
「あのカセットデッキ壊れちゃったの?」
そう言った瞬間、自分がなんてひどいことを言ってしまったんだって、また思った。
「あっ、で、でも、しょうがないよ。顔以外は大丈夫なの?すごい腫れてるけど」
『 だいじょうぶ 』
片手で顔を抑えているから、書くたんびにしゃがんで大変そうに書いてくれていたけど、僕は知りたくてしょうがなかった。
「本当に大丈夫?無理に学校行かなくてもいいんじゃない?痛そうだよ・・・」