小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十六章 グリーフ

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第十六章 〜 グリーフ 〜
P.8 

教室へ入っても相変わらずクラスメイトの反応は無い。僕に対しても、もちろん、磯野さんに対しても。皆、チラッと見るけど、すぐに友達の会話に戻っていた。

まだ教科書が届いていないから、今日も机をつけて授業を受ける。体育があっても相変わらず見学をする磯野さん。でも、見た感じだと、他のところは赤くなっていなかった。顔だけなんだろうか。でも、手の平と足のひざくらいしか見えない。

4限目の時、僕は磯野さんに色々と聞けた。もちろん、僕はノートの端に。磯野さんもノートの端で。

「まだ痛い?」

だいじょうぶです 渡辺くんのカセットデッキ

「僕がいつきに言うよ。まだ言わない方がいいと思うんだ。磯野さんのせいじゃないし、僕もカセットデッキ持ってるし今日はそれを貸すよ。」

家では聴けません。お父さんが怒ると思います。

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