第十六章 〜 グリーフ 〜
P.8
教室へ入っても相変わらずクラスメイトの反応は無い。僕に対しても、もちろん、磯野さんに対しても。皆、チラッと見るけど、すぐに友達の会話に戻っていた。
まだ教科書が届いていないから、今日も机をつけて授業を受ける。体育があっても相変わらず見学をする磯野さん。でも、見た感じだと、他のところは赤くなっていなかった。顔だけなんだろうか。でも、手の平と足のひざくらいしか見えない。
4限目の時、僕は磯野さんに色々と聞けた。もちろん、僕はノートの端に。磯野さんもノートの端で。
「まだ痛い?」
『 だいじょうぶです 渡辺くんのカセットデッキ 』
「僕がいつきに言うよ。まだ言わない方がいいと思うんだ。磯野さんのせいじゃないし、僕もカセットデッキ持ってるし今日はそれを貸すよ。」
『 家では聴けません。お父さんが怒ると思います。』