第十六章 〜 グリーフ 〜
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「ごめんね、待っててくれるなんて思ってなくて遅くなっちゃった」
今から思うと、僕は嬉しかった。恥ずかしいけど、人生で初めて一緒に友達と登校することが嬉しかった。転校生でまだ何も知らない磯野さんだけど。それに初めて出来た女の子の友達。僕といつきだけが見たあの顔。昨日眠れなかった理由なんて言えないけど、僕は嬉しかった。
「今日は曇ってるけど湿気があって暑いね。」
その時気付いた。磯野さんが下を向いている。髪の毛でアゴも少ししか見えない磯野さんだけど、明らかに下を向いている。何か昨日と違う。まだ会って3日目だけど、明らかに違う。
「・・・なにかあったの?・・・あっ、ピストルズ聴けた?」
少し遅めに歩きながら話しかけた。でも、相変わらず顔を見ることは出来なくて、目で何度も顔を見ようとしながら。メモを取り出しながら磯野さんは書いた。