第十五章 〜 ホーム 〜
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「え・・・と・・・どう思うかって・・・、その・・・・も・・・も、も・・・・もったいないと思うんだ・・・。」
頭の中の、どこかハジの方でもう一人の自分が言っている。「何言ってんだよ!」って。でも、その声が聞こえていたけど、そこまで言ってしまったから、もう止められないと思った。
「あの、昨日・・・、昨日さ・・・校庭で風が吹いた時・・・・その時、磯野さんの顔、見えたんだ・・・。あっ、でも、見ようと思って見たんじゃないよ、たまたま見えちゃって・・・、で、・・・でね、僕、すごい磯野さんの顔・・・その・・・・か、か、か・・・あの・・・いいと思ったんだ・・・」
最後の方は風の音よりも小さくなって、口だけが動いているようだった。何を言ってるんだって自分でも思った。告白されてるって一人勘違いしてるのが恥ずかしかった。本当に恥ずかしかった。
「いや、そういう意味じゃなくて・・・その・・・せっかく、その・・・もったいないって言うか・・・」
一匹のセミが飛んできて柿ノ木に止まる。ものすごい勢いでミンミンと鳴く。
磯野さんが何を思っていたのか、どんな気持ちだったのかは分からない。それはこれから出会う全ての人もそう。心の中の気持ちは分からない。それがいい時もあるし、悪い時もある。
ゴクンッという自分のノドの音が聞こえてしまうような大きな音を出す。もう終わりだ、バンドなんか一緒に出来る訳ない。こんな勘違いしてる男と一緒にやってくれる訳ない。またやっちゃった。まただ。僕はなんでいつもこうなんだ・・・。いつきに、どう謝ろう、一緒に出来ないってどういえばいいんだ。僕が台無しにしてしまった事をどう謝ればいいんだ・・・