第十五章 〜 ホーム 〜
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第十五章 〜 ホーム 〜
結局、夕方まで3人で話してた。まだ使えるということで、磯野さんはそのスティックを持ち帰ることになった。家での練習に使えるし、何より、この町には楽器屋なんてものは無い。学校で調達しない限り、手に入らないから。そして職員室へ戻り、おじいちゃんに音楽室の利用と楽器を使いたいことを改めて伝えてお礼を言った。なぜか僕は帰りに大きなカセットデッキを抱えて帰ることになったけれど。
「今日は世界ズが結成した記念日だな!やっぱすっげーいい!・・・世界ズ。これしか無いって感じの名前だよなぁ・・・ジャジャージャ、タンッタンッ、絶対かっこいい曲作るぞー!」
肩からかけたバッグをベースみたいに指で弾きながらいつきが嬉しそうに話している。でも、相変わらず校庭を出るまでの間、通り過ぎる生徒、校庭で部活をしている生徒、皆が磯野さんを見ていた。僕はそれが少しだけ気にしながら一緒に歩いた。
いつきと別れてまた二人での帰り道。今日なら、今なら言える気がした。言わなきゃいけない。胸がずっとドキドキしていた。