小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十三章 ハグルマ

目次はこちら

第十三章 〜 ハグルマ 〜
P.2 

玄関の傘立てに戻す時、気付いたんだ。「ちょっと待って」・・・それって一緒に通学するってことじゃないか・・・・僕が女の子と一緒に通学・・・ゆっくりと振り返ると同じ場所で磯野さんが立っている。でも、こんなに暑いのに、また長袖のシャツを着ている。おなかに汗が流れていくのを感じながら門まで戻る。

どうすればいいんだ・・・一緒に通学だって?周りから見たらどう思われる・・・僕と磯野さんが付き合ってるって思われるかもしれない・・・

違う、そんなんじゃないんだ!昨日転校してきて、学校案内をして、傘を貸したから朝返しにきてくれて、たまたま一緒に学校に来ただけだ・・・そうだよ、違うんだ・・・そんなんじゃないんだ・・・・傘を返しにきてくれたから、傘を返しに家にきたから一緒に・・・そうだよ!家だって同じ方向だからたまたま!!

『待ってて』、自分でとっさに言った一言。

ゆっくりと戻る、下を向きながら、でも僕なりに心臓が飛び出るくらい緊張しながら、汗だくになりながら言った。

「が、が、がっこう・・・いこう・・・」

次のページ

ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13