第十三章 〜 ハグルマ 〜
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玄関の傘立てに戻す時、気付いたんだ。「ちょっと待って」・・・それって一緒に通学するってことじゃないか・・・・僕が女の子と一緒に通学・・・ゆっくりと振り返ると同じ場所で磯野さんが立っている。でも、こんなに暑いのに、また長袖のシャツを着ている。おなかに汗が流れていくのを感じながら門まで戻る。
どうすればいいんだ・・・一緒に通学だって?周りから見たらどう思われる・・・僕と磯野さんが付き合ってるって思われるかもしれない・・・
違う、そんなんじゃないんだ!昨日転校してきて、学校案内をして、傘を貸したから朝返しにきてくれて、たまたま一緒に学校に来ただけだ・・・そうだよ、違うんだ・・・そんなんじゃないんだ・・・・傘を返しにきてくれたから、傘を返しに家にきたから一緒に・・・そうだよ!家だって同じ方向だからたまたま!!
『待ってて』、自分でとっさに言った一言。
ゆっくりと戻る、下を向きながら、でも僕なりに心臓が飛び出るくらい緊張しながら、汗だくになりながら言った。
「が、が、がっこう・・・いこう・・・」