第十三章 〜 ハグルマ 〜
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第十三章 〜 ハグルマ 〜
髪の毛で顔が見えないのに、僕は磯野さんの顔をジッと見た。磯野さんも僕の顔を見ていたと思う。目は見えないけど、お互いそう感じてたはず。気付くと口を開けてた。
「お、お、お・・・お、は・・おは、よう、どうしたの?」
もう書いてあった。取り出したノートは昨日のまま。乾かしてあったけど、グニャグニャに曲がっていた。そこには
『 傘ありがとう。ちゃんと乾かしてあります。』
「そ、そうなんだ、いいのに、そんな傘捨てて良かったんだよ・・・こっちこそごめん、穴開いてたでしょ・・・ごめん・・・」
『ごめん。』本当は傘の穴なんかじゃなく、昨日の言った言葉のことだった。でもいうことは出来なかった。その一言を伝えて動けなかった。はたから見たらどんな感じに見えたんだろう。気温も暑かったけど、汗が止まらなかった。傘を受け取って家に走る。
「ちょっと、待ってて!すぐに戻るから!」