第十三章 〜 ハグルマ 〜
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いつきは、ドラムが出来るということで何も不思議に思っていないようだった。立ち上がってお尻のホコリを叩きながら大きくノビをする。その影が太陽を隠した。いつきがてすりに寄りかかると、また太陽の日差しが目に入って眩しい。
「いよいよなんだ。いよいよ。ようやくそろった。あとは練習して、歌作ってさ、まずは来年の文化祭目指してやってこう。それでさ、みんなの腰抜かしてやろうぜ。どんな歌が出来るか楽しみなんだ。俺たちのオリジナル。俺たちの気持ちを歌にするなんて、どれだけ楽しいか思うだけでワクワクしちゃうよ。」
それは僕も思った。いつきと磯野さんと作った歌。友達と聴いたことが無い歌を作る。想像つかないけど自分たちで考えた言葉を、自分たちの好きなメロディーで演奏する。楽しいに決まってる。僕だってしてみたい。でも、弾いたことが無いギターに、僕が唄を歌う・・・それだけは想像が出来ないし、人の前で歌うのがどうしてもイヤだった。