第四章 〜エレクトリック〜
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「・・・・隠し部屋見たよ。」
「・・・・えっ!あの部屋に入ったの!体育着だけって言ったのに!」
「答えろよ!君がそんな性格だなんて、皆知らないもんな!」
「・・・・君・・・・もしかして・・・・セックスピストルズのこと言ってるのか?」
「そうだよ、部屋に張ってあるアレだよ。」
「ははは!なんだ、君、セックスピストルズ知らないのか?」
びっくりした。いつきがこんなに笑う奴とか知らなかった。普段も笑ってるけど、こんな大声で笑っているのを見たことが無い。しかもずっと今の今までで。
「なに笑ってるんだよ、知る訳ないだろ、僕はそんな変な趣味持ってないんだよ!なにが工場長の息子だよ、なにが大人しい性格だよ、お前なんか、ただのボンボンの変態じゃないか!」
「違うって。セックスピストルズってイギリスのバンドなんだよ」
「・・・バンド?」
「あの部屋見ちゃったのか・・・・・そっか。じゃぁ僕の秘密が全部見られたってことか・・・」
「あぁ見たよ。君がパスワードを言わなかったお陰で一生を棒に振るところだったんだよ。」
「・・・僕は・・・」
睨みつけようといつきをみると、手すりに持たれかかって山並みを見ていた。向かい風になって、髪の毛で見えなかった顔が今はすぐに分かった。さっきまでの暗い顔はもうしていない。