第四章 〜エレクトリック〜
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飛び上がるくらいに驚いた。見つかったかだって?パニック以外の何者でもない。後ろにはいつ出てくるか分からない警備員室があって、ゲートのパスワードは分からない。もし間違った答えを言ったら?もし警備員に見つかったら?僕の軽はずみな行動で家族が仕事を失う。父さんや母さんに一生許してもらえない、方舟に閉じ込められてここでおしまいなんだ。悔しくてしょうがなかった。今朝なんであいつに話しかけてしまったんだろう、なんでこんなことになってしまったんだろう。話しかけなければ今頃授業を受けて、いつものように窓から見える方舟の煙を眺めていることが出来たのに。なんで・・・・。
後ろの警備員室から話し声が聞こえ始めた。交代の時間だろうか。もう僕はどうすることも出来ずに捕まるのを待つだけだ。悔しさが怒りへと変わっていく。親切で声をかけた結末がこれか?僕の一生はこんなことで全て終わってしまうのか、いやだ、本当にいやだ。父さんにも母さんにも二度と顔を合わせられない。なんだこれ、これが現実である訳がない。何が方舟だ、何が世界を救う船だ、僕にとっては監獄だ、地獄だ。なにがなんだか頭も回らない。思い浮かぶのはあいつの顔だ。僕を地獄に落とし入れたあいつだ。息を思い切り吸い込んで僕は叫んだ。
「いつきーーーーーーーーーー!!」