小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第四章 エレクトリック

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第四章 〜エレクトリック〜
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第四章 ~エレクトリック~

電気がつく、そこは同じく8畳くらいの部屋。けれど、こんな景色は今まで見たことがない。とても不思議な部屋だった。電気がついたのに部屋が妙に薄暗い。洞窟に迷い込んだように周りを見渡す。部屋の壁という壁にポスターが張ってある。天井もだ。そのせいで、明かりが色んな色に反射して部屋の中が虹色のように見える。そこには見たことが無い外人のポスター。どうやら同じバンドのポスターみたい。怖そうな若い人たちがこっちを睨んでいたり、歌って演奏したりしている物もある。だけどひとつも同じ種類が無い。何種類あるんだろう、アルファベットを読んでみる。

「せ・・・、せくす・・・ぴすとるず?・・・せ、せっくす ぴすとるず だって?」

いつきのやつ、あんな大人しそうに見えて、セ、セックス?このバンドは一体なんなんだ、いつきはこんな秘密の部屋で何をしてるんだ、いつきのやつ、こんなこと考えてたのか、こんな隠し部屋の中でなにしてるんだ。なんなんだ、この家はいったい。一刻も早くこの部屋から出ようと振り返ると、また手に何かが当たった。

「いったっ・・・今度はなんだよ」

そこには楽器があった。・・・ギター?じゃない、ギターは一度音楽の授業で見たことがある。これは弦が四つしかない。ギターじゃない。じゃぁこれはなんだ?ギターより大きい気がする。白くて綺麗に手入れされてる。いつきがこれを持っているのを想像が出来ない。いつきがこんな趣味を持っているなんて・・・しかもセックスだって?この狭い町でこんなことを考えてたなんて信じられない、あいつの本当の姿はこういうことだったのか。

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