小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第四章 エレクトリック

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第四章 〜エレクトリック〜
P.10 

「おかしいと思わないか?こんな田舎の町の学校にも不良はいるだろ。先輩、卒業生、こんな町だって、いくらでも探そうと思えば不良なんか溢れてる。
でも俺の周りには不良はいない。不思議に思わないか?俺の立場を思えば奴らが来ない訳ないだろ。なんで集まらないかって思ったこと無いか?周りにいるのが普通のクラスメイトだけって不思議に思ったことないか?」

早口でせかされるようないつきの言葉を聞いて考える。そう言われて初めて気付いた。確かにいつきの周りにいるのは、不良じゃなく、クラスの明るい奴らばっかりで、不良と呼ばれるような奴らは一人もいない。でも、なぜ?なぜ?確かに町を支える方舟の工場長の息子って言ったら奴らが放っておくわけないのになんで?答えが分からずに僕はだまった。いつきが山並みを見ながらゆっくりと話し始めた。雲の隙間は相変わらず無い。ただ方舟の音がこの町に響いている。

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