|
幼馴染みの関野ブーこと関野浩之が同じ学年にいたのだ。これで、『ヤバネェ』伝説は語り継がれてしまう。高校生になったら、自分も『カップル』というものになって、松山城にのぼって、ロープウェーで手を繋ぎ、町で唯一の繁華街、ラフォーレ原宿松山でジェラートを食べる、そんな淡い夢もくだけちった。
ボート部のメンバー探しが始まった。八方手を尽くし、様々な事件を経て、ようやく集まったメンバーは、中崎敦子(通称ヒメ)、菊池多恵子(ダッコ)、中浦真由美(イモッチ)、そして、矢野利絵(リー)。渋々、条件つき、期間限定で集まってくれた仲間だ。
目指すは新人戦。しかしボートに乗ることすら出来ずひっくり返るわ溺れるわ、ようやく漕ぎ出だしたものの船酔い者も出るわで、さんざんの初出艇となった。呆れてみている男子部員たち。その中には、悦子の宿敵、関野ブーの姿もあった。
やがて、落ちこぼれ女子ボート部は、喧嘩と和解をくりかえし、それぞれの事情も理解しながら、ボートへの真剣な気持ちを確認しあい、少しずつ、少しずつ、固い絆を結んでいく。
『キャッチ、オール!』
『整調!』
『ラスト、ごひゃくーっ』
掛け声も、じょじょに熱をおびていく。やる前から、諦めるな。傷つくのを、怖がるな。勝ち負けではくくれない、それぞれのゴール目指して、オールを握れ―!
家族との葛藤。
将来の不安。
淡い恋。
友情。
青春時代のすべてを詰め込んで、悦子たちを乗せたボートは輝く海へと漕ぎだしていく―
|
|