がんばっていきまっしょい
Story/あらすじ
はじめに
第一艇
第二艇
第三艇
第四艇
特別艇
第五艇
第六艇
第七艇
第八艇
第九艇
最終艇
第一艇
 
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   すべてが始まったのは三年前の春、松山第一高校の入学式の朝からだった。懸命に自転車をこいできた新1年生の篠村悦子(鈴木杏)が校門近くにさしかかると、小中学と一緒だった中崎敦子(佐津川愛美)がうずくまって3人の女の子に囲まれていた。てっきりいじめられていると思いこんで悦子が「なんで泣かしよるん」と気色ばむと、リーダーらしき菊池多恵子(岩佐真悠子)は呆れたように「コンタクト落としたやて」。
一同は平謝りする悦子にかまわずあわてて校門へ向ったが、悦子だけがまだ探していると「どないしたん?」と声をかけられた。その長身のイケメンの中田三郎も遅刻してきたらしい。コンタクトは三郎が見つけてくれたが、体育館ではすでに校長が新入生歓迎の挨拶の真っ最中。2人がこっそり列にもぐりこもうとすると、一高慣例の掛け声が響きわたった。「がんばっていきまっしょい!」。初日から遅刻したが、悦子の顔は高校生活にかける希望に満ちあふれていた。

 悦子は高校ではボート部に絶対に入ると決めていた。この春休みに半日だけ自転車をこいで家出したときに見た、夕陽を浴びながら大海原をいく4人こぎのボートに感動したからだ。早速ボート部顧問の福田(相島一之)に入部したいと伝えたが、なんと男子部しかなかった。呆然となった悦子だったが立ち直りは早かった。「女子ボート部、私が作ります」。はりきって女子を勧誘しはじめた悦子に対して、クラスメートの反応は冷ややか。級友の矢野利絵(相武紗季)からも「目立ちすぎなんと違う?」とチェックが入った。初日から大遅刻して、しかも男子と登校。おまけに勧誘活動とくればいやでも目立つ。利絵は親切心から「大事な時期やけんね」とアドバイスしてくれたのだが、いま悦子が関心あるのはボート部のことだけ。他人の目なんか気にしてられない。

 だから学校を飛び出すと、ボート部の艇庫のある砂浜へ自転車を走らせた。「あの、すみません」。悦子が体を太陽に焼いていた男子部員たちにおずおずと声をかけると、意外にも「よう来てくれたなぁ」と拍手で大歓迎してくれた。悦子はうれしくて「頑張りますけん」と頭を下げていた。
 キャプテンの安田恭一(北条隆博)が艇庫へ連れて行ってくれたが、着替えていた男子を見て悦子は驚いた。「ブー!」。近所の幼なじみで同じクラスになった関野浩之(錦戸亮)ではないか。将来はプロ選手目指して中学ではサッカー部で頑張っていたはずなのに…。案内された部室のあまりのきたなさにも呆れた。悦子は早速トレーニングを始めるつもりでいたが、先輩たちと浩之は悦子を残して海へ出て行ってしまった。仕方ないから1人でバック台で汗を流していたら、ようやく夕方になって戻ってきた。
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