がんばっていきまっしょい
Story/あらすじ
はじめに
第一艇
第二艇
第三艇
第四艇
特別艇
第五艇
第六艇
第七艇
第八艇
第九艇
最終艇
第七艇
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   これで1勝1敗、勝負は女子に委ねられることになった。ところがスタート直前になっても悦子はあたふたしていた。強い風に備えてシートのネジをしめたいが工具が見つからない。「もうレース始まってしまうよ」。真由美に促されて立ち上がった悦子の前に「はい」と工具が差し出された。ウエア姿の利絵だった。「まだ間に合うやろか」。利絵の代わりに抜てきした佳代は繰り返し不安を口にしていた。駆けつけた仁美が断を下した。「お説教は後。準備しなさい」。悦子たちは「はい!」と返事すると、そろいの鉢巻をまいてスタート地点へ向かった。「集中していこう!スタート勝負や」。新海女子率いるちえみ(関めぐみ)が鋭い視線を返してきた。「用意、ロー!」。松山第一、新海両校のボートがすべるようにスタートした。

 悦子たちはスタートダッシュに失敗した。新海はぐいぐいと差をつけていったが、悦子たちは諦めなかった。「負けてたまるかーっ!」。観客席がざわめいた。松山第一が見る見る間に追い上げていったのだ。「キャッチ、ロー、キャッチ、ロー」。悦子たちは心臓が破裂しそうになりながらも懸命にこいだ。ちえみの顔に動揺が走り、新海のオールに乱れが出た。「イージーオール!」。ゴールはほぼ同着、勝敗は審判の判定に委ねられた。「新海!」。アナウンスが響きわたると応援席はしんと静まりかえった。
ヘトヘトになってボートを降りた悦子に利絵が近寄った。「途中もうダメやと思たけど、みんなとこげてるんやて思たら楽しくなって力でた」。悦子も思いがこみ上げた。「リーと一緒にこいどるんやて。戻ってきてくれてありがとな」。2人がしゃくり上げると、真由美たちもこらえきれなかった。「みんなでまたこうやって泣けるの、うれしいな」。抱き合いながら泣きじゃくる5人を見ている仁美ももらい泣きしていた。

利絵が抜けていたから新海に負けた。その利絵が帰ってきた。「よう戻ったな」。浩之から声をかけられて利絵は吹っ切れたように「ただいま」と微笑むことができた。そして三郎が男子ボート部に入部することになった。それは悦子の初めての恋の始まりでもあった。
 
 
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