がんばっていきまっしょい
Story/あらすじ
はじめに
第一艇
第二艇
第三艇
第四艇
特別艇
第五艇
第六艇
第七艇
第八艇
第九艇
最終艇
第二艇
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   悦子は多恵子がひそかに練習を見に来ていたことを3人に打ち明けた。「ボートに興味あるんよ。でもああいう人やけん、素直に来れんのよ」。悦子には多恵子のうっ屈した思いが分かる気がした。「ボートがなかったら、私もただの落ちこぼれや」。多恵子もボートをすれば何かが変わると思ったのではないか。悦子の言いたいことは3人にも伝わった。「ほやから今度こそみんなでボートを」。しかし悦子がまずクリアしなければならないのは、明日に迫った追試だ。
  一夜づけだったが、利絵にチェックしてもらうと「これやったら合格ラインいけるんやない?」と言われて悦子はホッとひと安心。試験直前になって校庭でぼんやりしている多恵子を見かけた。悦子が「追試頑張るけん、ボート部のこともう一度」と声をかけると、多恵子は「もう入る必要のうなった」と答えた。悦子の頭からはもう追試のことなど消えてしまった。校舎を飛び出すと多恵子の後を追った。2人の乗った電車は海へ。瀬戸内海をのぞむ堤防の上で、ようやく多恵子は「何でついて来るん?」と悦子に向き直った。

  昨夜多恵子は両親が離婚することを知らされた。「もしボートやったらあの最悪な両親も少しは変わるかなって」。父親はかつてボート部だったから、両親そろって試合を見に来れば夫婦仲が修復するかもしれないと考えたのだ。「でも、そんなん別に意味なしやった。私もなんや、すっきりしたし」。無理に笑いを作る多恵子に、悦子は何も言えない。聞こえるのはただ波の音だけ。やっと悦子が重い口を開いた。「私、好きよ。一生懸命やっとる人」。そこへ利絵が息切らしてやって来た。「何してるん!テスト」。

  多恵子も見かねて「もう戻りぃ」と言ってくれたが、悦子は動かなかった。「かまん。今日はもう菊池さんとおる。菊池さんはもう、私の友達やから。こんな哀しそうな顔しとるのに、ほぉっておけん…」。悦子から手を握りしめられた多恵子は突然しゃくり上げた。そして泣きじゃくりながら「ボートやりたい」ともらした。多恵子の背中をさすってやる悦子。そんな2人を利絵は優しく見つめていた。

  こうして女子ボート部の5人がそろった。悦子は追試を受け直して、トイレ掃除のお仕置きもこなした。5人が互いをあだ名で呼び合うにも時間はかからなかった。そして初めての大きな大会が目前に迫ってきていた。
 
 
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