小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第十八章 雨のち・・・

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第十八章 〜 雨のち・・・ 〜
P.8 

いつきが突然、あぜ道を降りて田んぼの中へジャブジャブと入っていく。いつきの姿は見えないけど、移動するたんびに稲がワサワサと動いている、そして田んぼの真ん中に行って、「おっしゃー!」という声と一緒に稲から顔が出てくる。

「一番うるさかったの、コイツだと思う!」

握られてたのは、大きなカエルだった。僕ら二人で笑った。周りにはすごい数のカエルの声が響いていたけど笑った。いつきの顔が本当に嬉しかった。別れる時もカエルを手にいつきが帰っていく。

「じゃぁ、月曜日な!まさかなー、せいたろうが恋なんてなー!」

「やめろよ、分からないって言ったろ!」

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼく、い、いそのさんのこと・・・」

「やめろったら!」

そんなやり取りも嬉しかった。いつきに今夜会えたのは何よりも嬉しかった。少し歩いたところで呼ぶ声がして振り返る。真面目な顔をしながらいつきがこっちを見ていた。

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