第九章 〜スピーク〜
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「お待たせー、磯野さん!授業も終わったし、これから俺らの学校案内するよ!さっきも話したけど、俺は1組の渡辺いつき。工場長の息子、君の父さんが働くことになった工場長の息子です、改めてよろしく。それで、こいつさ、野崎せいたろう、俺にとっての恩人で親友。人見知りだから、誤解されやすいけど、本当にいいヤツなんだ。今日はさ、せいたろうだけじゃうまく紹介出来ないから、俺も一緒に回ることにしたんだ。荷物バッグに入れたら、さっそく行こう!」
教科書とノートを入れていると、磯野さんもゆっくりとバッグに荷物を入れ始めた。教室は話し声で埋まってきているけど、いつも通りとまではいってない。まだ皆、僕らのほうを何度も振り返ったり、影で何かを話していた。準備が出来たのでいつきと僕が進み始めると、少し後ろから磯野さんがついてくる。
「どこから案内しようかな・・・・ここから一番近いのは・・・そうだ、音楽室からにしよう!俺の原点だし、よし!音楽室に行こう!」
「ね、ねぇ、音楽室から?」
「そう、その後に色々回れば一緒だろ。」
僕が追いかけると、ゆっくりと磯野さんもついてきた。1組を通る時、3階の3年生の教室を通り抜ける時、皆の視線はそれは酷かった。あまりにも露骨で、あまりにも可愛そうだった。でもいつきは全く気にしない様子で音楽室までの間、ずっと話しかけていた。