第九章 〜スピーク〜
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「おい、せいたろう!なんて顔してんだよ!なんかあったのか?」
「お、おっきぃ声出すなよ、なんだよ、別に何もないよ」
「お、君が磯野さん?初めまして、俺、渡辺いつきって言います。方舟の・・・ってまだ方舟のこと知らないか。工場長の息子です。なんか困ったことあったら何でも言ってね。あと、こいつと俺、バンドやってるんだ。セックスピストルズが好きでさ。もし良かったら一緒にやろうよ」
「何言ってんだよ!バンドのこととか言うなって・・・」
僕の声は教室中に響いた。やってしまった。磯野さんに気軽に話しかけるいつきが無神経なような気がしてつい声が出てしまった。周りはこっちをジッと見ている。どうしていいか分からずにいつきを見返す、するといつきは磯野さんを見ていた。
「ねぇ、俺と野崎せいたろうは他のヤツ等と違う。わかるでしょ。あいつ等とは違う。だから何でも言ってよ。本当にさ。」
「ちょっと・・・いつき来い・・・」
「な、なんだよ、おいったら・・・」
いつきの肩を引きながら廊下へ出る。振り返っても、磯野さんの反応は無かった。