第九章 〜スピーク〜
P.3
「どういうつもりだよ、なんで話しかけるんだよ」
「どういうことって、どういうことだよ?」
「ふざけるなって、磯野さんは喋れないんだよ?それなのに・・」
「お前、自分が何言ってるのか分かってるのか?」
「何言ってる?だから、磯野さんは」
「違うって、他のヤツ等もそうだけど、せいたろうがそうやって壁作ってんの気付かないのか?喋れないから話しかけるなって言ってるみたいだけど、じゃぁどうやって話すんだよ?」
「いや・・・それは・・・」
「皆そうなんだ、俺もそうやってうわべだけのヤツ等に囲まれてたから良くわかる。あの子の気持ちも何となく分かるんだよ。せいたろうも、皆も、優しさとか思ってんだろ?話せないから可愛そうとか、話せないから仲良くしなきゃとか、あの髪の色、何かあったからそうなったんだとかさ、変に考えて、結局してることは余計なお世話なんだよ。そういうのってさ、一番相手に伝わるんだよ。すぐに。
磯野さんが今どんな気持ちか分かるか?転校してきた初日だぞ?しかも話せなくてあの髪色ときてる。不安でしょうがないにきまってるじゃん、自分がそうだったらって考えてみろよ。一番安心するのは何も考えずに普通に話しかけることなんだよ。普通に。会話なんて考えてするもんじゃないだろ。」
・・・確かに僕は自分で気付かないうちに差別をしていたのかも知れない。こんな時、いつきは凄いなって思う。僕なんか本当に何も考えていないんだなって思う。でも、だからこそ、バンドを一緒にするなんて、夢みたいな気がますますしてしまうんだ。