第二章 〜「せ」と「い」〜
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そうそう、警備員ゲートのこと。なんでも警備員だからこそ、セキュリティが一番かかっていて、仕事中は誰もいないっていう話だった。そして案の定、誰もいなかった。見た目は取り囲む大きな壁と同じ白い扉。とても大きい。そこに小さな電卓のような機械がついている。とても安全とは言えるような代物ではなかった。
後ろを振り向くと、田んぼが続いてる。つばめが畑を飛び交っている。でも正面を向くと、真っ白い大きな方舟が煙りを吐き出しながら低い音をたて、町中が震えている。後ろにも、左右にも人がいないことを確認していつきに教えてもらったやり方をためす。本当に間違っていないんだろうか。もしも見つかったら僕は一生を棒に振る。父さんも母さんも路頭に迷うだろう。でも成功したら・・・?本当は深くなんか考えてなかった。何も考えずに毎日が過ぎて行く今の自分がイヤでしょうがなかったし、あの瞬間は見つかっても自分が生きていることを初めて実感出来るかもと思ってた。何度も言うけど、なぜだかわからないんだ。その日は、何かに導かれるような一日だったから。
電卓のような機械に向かって、声をかける。
「応答せよ、応答せよ、我をのせてくれ」
「・・・・・・・・アイテ ハ イマスカ?」