小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第二章 「せ」と「い」

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第二章 〜「せ」と「い」〜
P.2 

2年生になって1ヶ月、今年は5月というのにまだ寒い。白い雲がいくつも山の向こうから町の越えて渡っていく。下駄箱で、まだ真新しい2年生用の上履きに履き替える。見慣れない2階の景色、新入生何人かとすれ違う。中学で見た顔ばかりだからドキドキなんかしない。あぁ、久々。くらい。そんな事を考えながら二階の教室へむかう。コンクリートの階段を登っていると途中の購買コーナーで待っていたいつきが話しかけてくる。

「お、きたな!おはよう!今日はせいたろうにすごい発表があるんだ、こいよ」

いつきが僕を引っぱりながら屋上へ誘う。

「荷物置いてからでいいじゃんか、朝から一体なに?」

「いいからこいよ、シドの新しい本が手に入ったんだ!一緒に見ようぜ!」

「シド?あぁ、シドか、なんだよ、バッグ置いてきてからでいいじゃんか」

「いいからこいよ!」

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