第十二章 〜 i so no 〜
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「もしもし、渡辺でございます。」
「あ、・・・あの、僕、野崎せいたろうと言います。・・・いつき君いますか?」
「あぁ、いつもお世話になっております。いつきさんですね、少々お待ちください」
初めて電話をかけるいつきの家。今のはきっと家政婦さんだ。受話器の奥でいつきを何度も呼ぶ声が聞こえる。どうやら部屋の防音室にいるようで、家政婦さんの呼ぶ声に反応しない。階段を上っていく足音が聞こえて、改めて思い返してみる。
でも、本気だったのかな・・・バンドやるって・・・いつきと一緒にやりたいってことか?僕はまだ誘われてるところだし、メンバーじゃないし・・・なんで僕にメモ見せてきたんだ?なんで僕に伝えてきたんだ?磯野さん・・・
「まだなの?早く終わらせなさいよ?」
「いいから台所行っててよ!聞かないでいいから!!」
受話器を抑えながら母さんに伝えていると、いつきの声が手元から聞こえていた。