第十一章 〜花柄で骨の折れた〜
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「・・・えっと・・・ンドや・・・?・・・カタカナとひらがな?ちょっと待って・・・よく見えなくて・・・・」
ジッと見ている間にもノートに雨粒が当たって滲んでいく。目をこらしてノートを見てみると、薄くなったり、濃くなってる文字だけど、なんとか読めた。短い文章。
「・・・・ぇっ?」
正面を向くと磯野さんの顔は相変わらず見えなかった。だけど白と黒の髪の毛が雨に濡れてアゴの先の毛先から雫になって流れてた。その時、僕はどんな顔をしていたんだろう。どんな反応をすればよかったんだろう。
気付くと磯野さんの灰色の髪の毛も、顔を覆い隠している髪の毛も、気にならずにいた。もう頭の中にはこれしか無かった。始まりが始まった。また新しい出会いだったことにはまだ気付いていなかった。ノートに書いてあったんだ。綺麗な、磯野さんの字で。顔を見上げた、そこには磯野さんがいた。
『 バンドやる 』