第十一章 〜花柄で骨の折れた〜
P.1
第十一章 〜花柄で骨の折れた〜
一瞬だった。でも確かに見たんだ。
僕ら二人の時は止まったままだったけど、風は一瞬でやんだ。そして小雨が降り続いている。髪の毛に雨粒がついて、灰色から白へ色が変わっていた。
慣れない様子でヘルメットをかぶる様子は、やっぱり不思議だ。まるで顔を無くしてしまったような姿。
『 私も右側 』
見せてくれたノートに書いてある文字も雨ですぐに滲んでしまいそうだった。
「・・・・・」
「・・・ねぇ、いつき・・・」
「・・・・・」
「・・・・ねぇってば!いつきってば、磯野さんも同じだってさ」
「・・・・・」
「ねぇ!いつき!」
「・・・あ、あぁ、なんだったっけ?」
「なに言ってんだよ、磯野さんの家の方向だよ!同じだってさ!行こう、風邪引いちゃうよ!」
「・・・あぁ、行かないと・・・」