第十一章 〜花柄で骨の折れた〜
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「じゃ、じゃぁ、僕の家正面のあの家だから、行くよ・・・磯野さん家ってまだ奥?」
バッグからノートを取り出して書く姿を見て、僕は気付けなかった。この雨の中、ノートに書くことがどんなに大変か。なんどもなんども鉛筆でノートに書こうとしているのにうまく書けずにしているのに気づいたのは少し経ってからだった。
「・・・あっ!ご、ごめんなさい!いいんだ、書かなくていいんだ。そうだ、ちょっと待ってて、傘持ってくる!ちょっと待ってて!すぐに戻るから!」
僕は馬鹿だ。何で気付けなかった。家までの一本道をガムシャラに走った。水たまりの水がクツにも制服にもかかる。踏みつけられた水がものすごい勢いで横へ飛んでいく。ドアが壊れるくらいの勢いで開けると母さんがビックリして玄関まで飛んできた。