第十一章 〜花柄で骨の折れた〜
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「母さん、傘どこ!前一回使った、お母さんの、あの花柄のヤツ!!」
「おかえり、雨大丈夫だった?そんなに濡れて、今タオルもって来るから・・・」
「タオルなんかいいからあの傘どこ!!前にお土産にもらったあの花のヤツ!!」
「どうすんのよ、あの傘。奥にしまっちゃってるわよ、あんな傘どうするの?」
「・・・もういいよ!!」
ドアを開けて玄関の横にいつも立てかけてある骨の折れた僕の傘を手に取ってあぜ道を全速力で戻る。磯野さんはじっと立って待っていた。
全力で走るなんて方舟に入った時以来だった。息が続かないけど、もう何も考えられなかった。