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artist : DONOVAN
title : 『 SUNSHINE SUPERMAN 』(US)
release : 1966年9月
label : EPIC RECORDS
tracks ( cd ) : (1)SUNSHINE SUPERMAN (2)LEGEND OF A GIRL CHILD LINDA 【少女リンダの伝説】 (3)THREE KING FISHERS 【3羽のかわせみ】 (4)FERRIS WHEEL 【観覧車】 (5)BERT'S BLUES 【バートのブルース】 (6)SEASON OF THE WITCH 【魔女の季節】 (7)THE TRIP 【夢の旅路】 (8)GUINEVERE 【王妃グィナヴィーア】 (9)THE FAT ANGEL 【太った天使】 (10)CELESTE 【シレステ】
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(5) / side B...(6)〜(10)
members : DONOVAN,vocal,acoustic guitar,electric guitar ; JIMMY PAGE,electric guitar ; ERIC FORD,acoustic guitar ; JOHN CAMERON,keyboards ; SPIKE HEATLEY,electric bass ; BOBBY RAY,electric bass ; FAST EDDIE HOH,drums ; BOBBY ORR,drums ; SHEILA PHILLIPS,sitar ; A. FRIEND,violin.
(現行のCDには演奏者のクレジットが記載されていないため、『 All Music Guide 』 を参考にさせていただいた。)
producer : MICKIE MOST
arranger : JOHN CAMERON
related website : 『 Official Donovan Website 』(公式サイト)




(1)SUNSHINE SUPERMAN  ▲tracks
 その後のドノヴァンの音楽性を集約し尽くしたかのような“グルーヴィー・サイケデリック・クラシカル・フォーク・ロック”(1)。彼の代名詞と言っても過言ではないだろう。ソウル・ジャズと R & R を掛け合わせたようなリズムと、ヴォリューム奏法を絡ませてちょっとシタールを模したようなエレキ・ギター、ジャカジャカと掻き鳴らされるアコースティック・ギター。それに煌びやかさを添えるハープシコード(チェンバロ)。そして何よりもそのサウンドの仕上げとなっているのが、マッタリとしたコクがあるのにどこかスモーキーなドノヴァン本人の声。もう完璧なくらいファンキーかつクールな曲だ。
 リッキー・リー・ジョーンズ、ヴィクター・フェルドマン、マンフレッド・マンブライアン・ベネットビッグ・ジム・サリヴァンシャンゴ、ガボール・ザボなど多くのミュージシャンがカヴァーしているが、特にジャズ・ギタリストのガボール・ザボはこの(1)以外にも(3)(4)を取り上げているほど、本作を気に入っているようだ。


(2)LEGEND OF A GIRL CHILD LINDA 【少女リンダの伝説】  ▲tracks
 ヴェルヴェット・アンダーグラウンドにいたニコの 『 CHELSEA GIRL 』 の雛形的な(2)。“室内楽フォーク”といった趣だ。暖かな日差しの中にいるのに、なぜか無性に切ない気持ちに胸かきむしられるような曲。
 まずは、アコギを抱えて歌うドノヴァンの前に、聴き手が“大木の根元にポッカリと空いた穴”から落っこちてきたかのような、効果音めいたストリングスでスタート。その後は、チェロやハープシコード、オーボエ(のはず)といったクラシカルな楽器が、訥々と歌うドノヴァンを囲むように鳴る。
 初めにサウンド的に“『 CHELSEA GIRL 』 の雛形のような”と書いたが、ニコの歌い方もこの曲でのドノヴァンの歌い方に似ているような気がする。本作が'66年9月、『 CHELSEA GIRL 』 が'67年10月のリリースということを考えると、ニコの制作陣が本作を参考にした可能性は十分にあると思う。
 また、この曲の歌詞には“WHITE QUEEN”という言葉が出てくるのだが、この年代のブリティッシュ・フォークやロックには“○○色の△△(ここには“王”や“女王”など、王族の続き柄のようなものが入る)”といった題材がよく出てくる。キング・クリムゾンの「IN THE COURT OF THE CRIMSON KING」(同名アルバムに収録)やクイーンの「WHITE QUEEN」「BLACK QUEEN」(『 QUEEN II 』 に収録)といった風に。これらの曲はどれも、楽曲の基本となるフォーマットがフォークなので、何か繋がりを感じてしまう。


(3)THREE KING FISHERS 【3羽のかわせみ】  ▲tracks
 シタールがフィーチャーされた、“ラーガ・フォーク”・ナンバー(3)。シンプルなアコギとパーカッションをバックに、シタールやヴァイオリンが妖しく奏でられる。何となく、瞑想した仏陀が紫の煙の中からボファッと出現しそうな雰囲気すらある。
 ドノヴァンがインド音楽やシタールに興味を持ったのはジョージ・ハリスンの影響なのだが、彼の歌声はジョージのそれとは比べ物にならない程にハマっており、もう完全にインドにイってしまっている。サウンド的にはジョージのものの方が本格的なのにもかかわらずだ。雰囲気の勝利といったところか。
 そういったサウンドの面やメロディーの一部は確かにインドっぽいのだが、それ以外の部分は何か“ヨーロッパ周辺に古くから伝わる民謡”めいた雰囲気を持っていて、何となくこの(3)とヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「VENUS IN FURS 【毛皮のヴィーナス】」(『 THE VELVET UNDERGROUND & NICO 』 に収録)や、サイモン&ガーファンクルの「SCARBOROUGH FAIR/CANTICLE」(『 PARSLEY, SAGE, ROSEMARY AND THYME 』 に収録)は似た印象を受ける。しかし、これは“個々のフレイズがソックリ”という意味ではなく、“同じようなルーツから生まれている”といった意味でである。「VENUS IN FURS」は特にデモ・ヴァージョン(5枚組ボックス 『 PEEL SLOWLY AND SEE 』 のDISC 1に収録)を聴くとよく分かる。「SCARBOROUGH FAIR」から始めて、順に「VENUS IN FURS」デモ・ヴァージョン、「VENUS IN FURS」正規ヴァージョン、そしてこの(3)と並べて再び「SCARBOROUGH FAIR」に繋げてみると、“楽曲の環”のようなものが出来上がる。この辺のことは 『 CHELSEA GIRL 』 の所でも少し書いたのだが、'66〜'67年前後の音楽界(特にフォーク界)では、この辺りの音楽がトレンドだったのかもしれない。
 そんなこんなで、この(3)は洋の東西が融合した曲とも言えそうだが、ヨーロッパ(EURO)もアジア(ASIA)もユーラシア(EURO + ASIA)大陸で陸続きなのだから、「融合していて当たり前」と言えば当たり前である。


(4)FERRIS WHEEL 【観覧車】  ▲tracks
 今度もシタールが登場する(4)。こちらでは、シタールはそれほどエキゾチックなエグみを発揮しておらず、パーカッションとアコギ、ベースによるノンビリとしてピースフルな演奏に花を添えるといった程度のもの。そういったインストよりもむしろ、ドノヴァンのマジカルな声そのものがこの曲の雰囲気を決定しているような印象を受ける。


(5)BERT'S BLUES 【バートのブルース】  ▲tracks
 メロディーはとてもブルージーなのに、(2)同様にクラシカルな楽器が徐々に増えてきて、“室内楽ブルーズ”の様相を呈してくる(5)。前半は“ブルージーなハープシコード”が活躍しているが、後半などはそんなサウンドにさらにムーディーなサックスが加わって本格的に“室内楽ブルーズ”となっていく。因みに、タイトルの「BERT」とはペンタングルのバート・ヤンシュらしいが、歌詞にはそれらしい言葉は見当たらない。


(6)SEASON OF THE WITCH 【魔女の季節】  ▲tracks
 アル・クーパー/マイク・ブルームフィールド、ヴァニラ・ファッジ、リチャード・トンプソン、ジュリー・ドリスコール、ブライアン・オーガーなど多くのミュージシャンにカヴァーされた(6)。僕としては、それほど悪い曲とは思わないまでも、そんなにカヴァーしたくなるほどの名曲とも思えないのだが、ちょっとサイケな感じが受けているのだろうか? それとも海の向こうのミュージシャンや音楽ファンには何か特に魅力的な部分でもあるのだろうか? その辺りに洋楽と邦楽との見えない大きな隔たりのようなものが秘められているのかもしれない。
 サウンド的には、Aメロはユラユラしたバッキング・ギターとチロチロと鳴るオルガンによる、陽光の中にいるような感じで、サビというかBメロではメケメケとしたギターのチョーキング激しい中、いつもは静かめなドノヴァンがとても激しい歌い方をする、といった感じ。


(7)THE TRIP 【夢の旅路】  ▲tracks
 本作中にあってはファンタジー、サイケデリック、エキゾチック・フレイヴァーが薄い、軽快なシャッフル曲(7)。歌詞もL.A.のドライヴからスタートする辺りから既に現実的で、“フェリーニ”、“ボビー(ボブ)・ディラン”といった固有名詞も登場する。


(8)GUINEVERE 【王妃グィナヴィーア】  ▲tracks
 弾いては休むアコギのアルペジオによるバッキング(途中からパーカッションも入る)と、その隅の方で微かに鳴るシタールとフルート(か何かの管楽器)による、静謐な“サイケデリック・フォーク”(8)。まるで桃源郷にでもいるかのような曲だ。この曲も何となくヨーロッパ周辺の古い民謡のような雰囲気を持っており、ドノヴァンの独特の声と相俟ってファンタジックな名曲に仕上がっている。
 因みに、クロスビー,スティルス&ナッシュの“ほぼ同名異曲”(“N”が1つ多いので)もあるが(『 CROSBY, STILLS & NASH 』 に収録)、そちらもドノヴァンとは違うアプローチながら、神秘的な雰囲気の名曲に仕上がっている。


(9)THE FAT ANGEL 【太った天使】  ▲tracks
 ママズ&パパズの“ママ・キャス”ことキャス・エリオットをモデルにしたという(9)。この曲でもシタールが使用されており、ちょっとサイケデリック。歌詞の中にはジェファソン・エアプレインまで登場する。そんなサウンドと歌詞のせいか、実際にジェファーソン・エアプレインが彼らのライヴ盤 『 BLESS ITS POINTED LITTLE HEAD 【フィルモアのジェファソン・エアプレイン】』 でこの曲を取り上げ、“ユラユラ”で“ドカドカ”な演奏を展開している。


(10)CELESTE 【シレステ】  ▲tracks
 メロトロンやオルガン(ハーモニウムかも)、ハープシコード、シタールといった、名前を並べただけで「さぞドリーミーな曲なんだろうなぁ」と想像してしまいそうな楽器群で演奏される(10)。“桃源郷にでもいるような”といった(8)が“神秘ヴァージョン”とするなら、この(10)はその桃源郷の“至福ヴァージョン”。ここでもドノヴァンの声は雰囲気作りに欠かせない要素となっている。
 そもそもこの“CELESTE”という言葉には“天上の”という意味があり、曲名からして既に“至福”なのであるが、先ほど挙げた楽器以外にも途中から演奏される楽器があって、その楽器こそが鍵盤鉄琴の改良楽器〜“CELESTE(チェレスタ、またはセレステとも)”。もう曲名、曲調、楽器の“三位一体”で“至福”なのであった。


 因みに、本作のプロデューサーであるミッキー・モストは、本作の制作当時、ヤードバーヅのプロデュースを手掛けていたため、ジミー・ペイジがギターで参加している模様(どの曲かは不明)。


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