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artist : QUEEN
title : 『 QUEEN II 』
release : 1974年3月
label : EMI RECORDS
tracks ( cd ) : (1)PROCESSION (2)FATHER TO SON 【父より子へ】 (3)WHITE QUEEN (AS IT BEGAN) (4)SOME DAY ONE DAY (5)THE LOSER IN THE END (6)OGRE BATTLE (7)THE FAIRY FELLER'S MASTER-STROKE 【フェアリー・フェラーの神技】 (8)NEVERMORE (9)THE MARCH OF THE BLACK QUEEN (10)FUNNY HOW LOVE IS (11)SEVEN SEAS OF RHYE 【輝ける7つの海】
tracks ( analog ) : SIDE WHITE ...(1)〜(5) / SIDE BLACK...(6)〜(11)
members : FREDDIE MERCURY,vocals,piano,harpsichod ; BRIAN MAY,guitars,vocals,bells ; JOHN DEACON,bass guitar,acoustic guitar ; ROGER MEDDOWS-TAYLOR,percussion,vocals.Virtuoso castanets by ROY THOMAS BAKER ...and nobody played synthesizer!
producer : ROY THOMAS BAKER & QUEEN (1〜7,11),ROBIN GEOFFREY CABLE & QUEEN (8,10),ROY THOMAS BAKER,ROBIN GEOFFREY CABLE & QUEEN (9)
related website : 『 QUEEN ONLINE.COM 』(公式サイト。英)、『 QUEEN Official Web Site 』(東芝EMI版の公式サイト)、『 BRIAN MAY.COM 』(ブライアン・メイの公式サイト)、




(1)PROCESSION  ▲tracks
 ブライアン・メイが、ワウ・ペダルをトーン・コントローラーとして使用することによって、見事なオーケストレイションを披露している(1)。
 期待と不安を一身に背負うバス・ドラムに乗せて、中域の管楽器を思わせる左チャンネルのギター、中低音の弦楽器を思わせる右チャンネルのギターが厳かに鳴り出す。
 次のメロディーに移ると、今度は左右のパートが逆転、右から高らか鳴り渡るトランペット(を模したギター)が、そして左からはチェロ(を模したギター)が登場、厳かさの上に華を添える。
 当時のハード・ロック・ギタリストの中にはワウ・ペダルを“ワウワウ”せずに、半開きにしたまま中域の音を強調させるトーン・コントローラーとして使用している者がいて、マイケル・シェンカーなどもその一人。しかし、ブライアンの場合はもう一歩突っ込んだ使い方をしていて、ペダルを開き気味にしてトランペットなどを、閉じ気味にした上にヴォリューム奏法(もしくはヴォリューム・ペダルか)も併用してチェロなどを再現している。また、彼の手作りギターによるところもあるのだろうが、普通のギターでも大体近い音は再現できる。このほかにも、『 A NIGHT AT THE OPERA 【オペラ座の夜】』 の「GOOD COMPANY」ではクラリネットの音にまで挑戦している。
 当時からハード・ロック・バンドとして見られがちなグループだけど、彼ら(特にブライアン)の“宅録”的なセンスも見逃さないで欲しい。


(2)FATHER TO SON 【父より子へ】  ▲tracks
 (1)という名イントロダクションを受けて始まる、優しく明るく壮大な曲(2)。ロジャーのドラム・ロールやブライアンのギターの装飾音が“栄光の”という雰囲気を醸し出している。 また、スキャットで構成された、ソフト・ロックと聴きまごうこと必至のブリッジや、それに続くレッド・ツェッペリンを彷彿させるハードなリフで構成された展開が豪快だ。そこで歌われる詞がとても印象的。

  「たとえ、その言葉の意味を理解できぬとも
   お前は死の間際に、そっくり同じ事を書き記すだろう」(訳:山本安見氏)

 何というか、「お前も歳を取れば分かるよ」というよりも、「お前なら自分と同じ気持ちを抱く者に成長してくれるはずだと信じている」という気持ちがこもっているような気がする。



(3)WHITE QUEEN (AS IT BEGAN)  ▲tracks
 可憐で気品溢れる(3)。ブライアンの楽曲中心に構成した“サイド・ホワイト”のヤマ場といえる曲。悲しげなフォーク調の雰囲気がこの曲の基調をなしているが、その雰囲気が何となくキング・クリムゾンの「EPITAPH」や「THE COURT OF THE CRIMSON KING」(共に 『 IN THE COURT OF THE CRIMSON KING 【クリムゾン・キングの宮殿】』 に収録)に似ている。ひょっとしてこれは、ブライアンが単に約5年も前のキング・クリムゾンの1stを意識したのではなく、ブライアンとロバート・フリップのルーツの一つとしてブリティッシュ・フォークがあることを意味しているのではないだろうか。
 それにしても、間奏でのギター・オーケストレイションも見事。その間奏の導入部で出てくるシタールだと思い込んでいた楽器が、実は“HAIRFRED”という古くて安いギターのフレット部分を改造したものだということを最近ライナー(吉田俊宏氏)で知って驚いた。


(4)SOME DAY ONE DAY  ▲tracks
 フォーキーなアコギのストロークがとてもピースフルな、ある意味“ソフト・ロック”の(4)。クイーンを全く聴いたことがなく、ハード・ロックが大嫌いなソフト・ロック・ファンに、名前を伏せて聴かせてみたい曲。
 正直な話、眠そうなブライアンのヴォーカルが昔は物足りないと思っていたし、また、それほど“名曲”という感じはない曲だけど、この脱力感は本作の中ではちょっとしたオアシス。


(5)THE LOSER IN THE END  ▲tracks
 どこの家庭にも訪れる光景、「家を出て行く息子とそれを悲しむ母親」。その双方に向けてのメッセイジを歌った、本作中最もヘヴィーでルーズな印象のロック・ナンバー(5)。ロジャー・テイラーのヴォーカルがかなりハードだ。エンディングでフェイド・アウトしていく時のドラミングも凄まじい。
 この曲に限らず、彼の声はロッド・スチュワートをハイパーにした“ロック・シンガー然”とした感じで、かなり荒っぽい印象が強い。しかし、いざコーラスとなると最も高いパートは彼が歌っているほどで、ファルセットもフレディーよりもしっかりしているし、ライブで最も安定したヴォーカルを聴かせてくれるのも彼だ。彼がいるといないとでは、クイーンのヴォーカル・サウンドは全く違うものになっていたに違いない。


(6)OGRE BATTLE  ▲tracks
 いよいよ怒涛の“サイド・ブラック”の幕開け(6)。聴き手をじらすように、空間が捻じ曲がるような音の中から、闇を切り裂く閃光のようなハーモニーと、テープの逆回転技をミックスしたイントロが飛び出てくる。このイントロの終わりに出てくるギター・リフと「ア・ア・ア・ア・ア〜〜〜〜〜〜〜」というフレイズが曲中幾度も登場し、この曲の印象を決定付けている。
 このリフだけではなく、この曲には随所にハードなギター・リフが顔を出し、ハード・ロック的要素が強調されている上に、“ズンドコ”したリズムとそのハードなギターがいい具合に絡み合って、タイトル通りのサウンドに仕上がっている。
 終盤、オーガ達の悲鳴が終わった後の展開が見事で、急にマイナー調になり「リ〜ヴ・フォ・レヴァーモ〜〜〜」という辺りには悲哀が漂っている。


(7)THE FAIRY FELLER'S MASTER-STROKE 【フェアリー・フェラーの神技】  ▲tracks
 フレディーが弾くハープシコードの連弾で始まる、“これぞクイーンの真骨頂!”ともいうべき(7)。「2分チョイの中によくもコレだけの展開を詰め込んだなぁ」とひたすら感心してしまうほどに、あらゆるアイディアを結集して目まぐるしく展開し、フレディーのポップ・フリークぶりが堪能できる。
 華やかかと思えば、次の瞬間にはスリリング。かと思ったら可憐だったり、ピースフルだったり。とにかく彼らのあらゆる局面が詰まった、“濃縮還元100%クイーン”な一曲。コメントで言った“ハードなソフト・ロック”の最もわかりやすいケース。
 僕は本作を、大抵アルバム一枚通して、もしくは“サイド・ブラック”を通して聴くことが多いのだが、そうやって聴き終えた後、また何度かリピートしてこの曲を聴いてしまう。特に好きな部分は、「ヒーズ・マイ・ヒーロー (ァ〜ア~~~)」というあたり、それにスリリングな間奏と、その間奏を抜けた後の「ソルジャ、セイラ、ティンカ、テイラ、プラウボ〜イ」のくだりだ。声のツヤ、言葉のリズム、抑揚、全てが至福だ。
 因みに、この曲でスリル感を出すのに一役買っているカスタネットを叩いているのは、プロデューサーのロイ・トーマス・ベイカー。


(8)NEVERMORE  ▲tracks
 前曲終わりのピアノからそのまま始まる、短いながらも緩急のあるバラード(8)。彼らのコーラスの美しさを堪能できる一曲。“(9)へのインタールード”と、軽く流せない魅力を持っている。
 主人公が“永遠に絶望(NEVERMORE)”してしまう失恋の唄がこんなに華麗なのはちょっと変かもしれないが、とにかく名曲だ。
 吉田俊宏氏のライナーによれば、フレディーがクイーンでデビューする前に「ラリー・ルレックス」(らりるれ……笑)という変名でリリースしたシングルをプロデュースした、ロビン・ジェフリー・ケイブルなる人物がこの曲と(10)をプロデュースしているとのこと。


(9)THE MARCH OF THE BLACK QUEEN  ▲tracks
 “サイド・ブラックのヤマ場”であると同時に“本作の最大のヤマ場”でもある、大作(9)。目まぐるしい(7)にさらに環をかけて目まぐるしい展開を繰り広げ、「これでもか!」というぐらいに様々なアイディアやフレイズを散りばめた“究極の9曲目”。
 ちょっと不安げなピアノでスタート。そこから一気に、文字通り“無我夢中”のフレディー・ワールドへ引きずり込まれていく。途中のサウンドは“聴いてのお楽しみ”ということで(曲が長めなせいもあるけど)。
 …で、終わりの方のピアノの感じは、何となく「BOHEMIAN RHAPSODY」に似た雰囲気がする…。かと思いきや、まだ続きがあって、(今度こそホントに)ラストのギターの「キュ〜ン、キュゥ〜ン!」というフレイズは、「ギターに生命があったとしたらこんな鳴き声なんだろうな」と思ってしまうほど生き生きとしている。また、「ラーラララ〜〜〜、フォレヴァ〜〜ア〜〜〜」という華やかなコーラス・パートもたまらなくいい。
 この曲は(というか“本作は”と言ってもいい)是非、ヘッドフォンでも聴いて欲しいと思う。あちこちの定位からいろいろな音が次々と出てきては消えていく。コーネリアスの 『 FANTASMA 』 が好きな人なら、きっと気に入ってくれると思う。


(10)FUNNY HOW LOVE IS  ▲tracks
 アコギがフィーチャーされてはいるけど、(4)よりもさらにピースフルでフラワーな曲調の(10)。もう、完全に現実から遠く離れた場所に立っている気分になってしまう。
 ちょっと(というか“かなり”)気になるのが、CDが再発されるたびに(9)とこの(10)の境目が曖昧なことだ。確か13〜14年前に出ていた“SUPER MASTERS”シリーズのモノがかなりキッチリしていたような気がする。'01年ヴァージョンは(10)になるタイミングがほんの少し早いし、'94年頃のヴァージョンは(9)のラストの「キュ〜ン、キュゥ〜ン!」というフレイズが(10)の方に入れられていたと思う。音質の向上の前に作品の構成をまず把握して欲しいものだ。


(11)SEVEN SEAS OF RHYE 【輝ける7つの海】  ▲tracks
 ある意味、今で言う“ボーナス・トラック”的な意味合いの(11)。この2ndアルバムを楽しんだ後で、1stアルバムのエンディング曲を完成させて持ってきた上に、その終わりの辺りには、次作からちょくちょく顔を出し始めるミュージック・ホール的な要素も見せたりするところなぞ、彼らの旺盛なサービス精神のあらわれだと思う。
 が、しかし、“オマケ”というにはもったいなさ過ぎるほどに完成度が高くポップなナンバー。1stの時よりも速いフレイジングのピアノに乗せて、粘っこいブライアンのギターがお出迎え、躍動的なリズム・パターンやはち切れんばかりのコーラスでグイグイと聴き手を引っ張っていく。当時のリスナーは、「まさかこんなに高いクオリティーであの曲が帰ってこようとは!」と思ったに違いない。
 そして、“キメ”となる艶やかなコーラスがとても印象的で、「フォレヴァ〜エヴァ〜エヴァ〜ァ〜〜〜ア~~~~~~~!」と、(9)に続いてまたもや“forever”。
 しかし、彼は自分自身がポップ・ミュージックの世界で、そして一人一人の聴き手の心の中で“forever”な存在になることを既に知っていたのだろうか。この“forever”が含まれた一節には、なんだか感慨深いものがある。

  「I belong to you foerver (私は永遠にあなたのものです)」
  


 本作のテーマが“美”の追求なのは、4人がバランスよく写るジャケット(この構図は「BOHEMIAN RHAPSODY」のプロモーション・ヴィデオにも使用された)を見たり、本作をひと通り聴いてみれば自然に分かると思うが、僕にはもう一つの隠れたテーマがあるような気がしてならない。それは“永遠性”や“普遍性”だ。

 “forever”、“never”、“every〜”などといった“ever (いつも、常に、絶えず)”の入った言葉を曲中の印象的な部分に持ってきたり、タイトルに「SOME DAY ONE DAY (いつの日か)」と付けたり、(2)や(5)のように、どの人間の間でも(拡大解釈すれば動物の間でも)永遠に繰り返される父子・母子といった親子関係のやり取りを歌ったりと、曲想は違っていても、何となく一貫したテーマが存在するような気がするのだ。


 と、ここまで来てから言うのもなんだけど、この素晴らしいサウンドが全てクイーンの4人によって生み出されたかというと、残念ながら答は“否”で、本作を始めとする初・中期のアルバムのほとんどをプロデュースしたロイ・トーマス・ベイカーの力に負うところがかなり大きいのだ。その証拠に、彼がプロデュースしたカナダ(現在はフランス)のシンガー/ソングライター〜ルイス・フューレイの2ndアルバム 『 THE HUMOURS OF 』 を聴いてみることをオススメしたい。特に「LEGACY」という曲でのギター・サウンドやリズム・パターンにそれが顕著。
 因みに、彼はT.REXの 『 T.REX 』 とその次作 『 ELECTRIC WORRIOR 【電気の武者】』 にエンジニアとして参加している。


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