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artist : SLY AND THE FAMILY STONE
title : 『 FRESH 【輪廻】』
release : 1973年6月
label : EPIC RECORDS
tracks ( cd ) : (1)IN TIME (2)IF YOU WANT ME TO STAY 【一緒にいたいなら】 (3)LET ME HAVE IT ALL (4)FRISKY (5)THANKFUL N' THOUGHTFUL (6)SKIN I'M IN (7)I DON'T KNOW (SATISFACTION) (8)KEEP ON DANCIN' (9)QUE SERA, SERA (WHATEVER WILL BE, WILL BE) (10)IF IT WERE LEFT UP TO ME (11)BABIES MAKIN' BABIES
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(5) / side B...(6)〜(11)
members :
SLY STONE,vocals,(organ); ROSE STONE,piano,vocals ; FREDDIE STONE (FRED STEWART),guitar ; CYNTHIA ROBINSON,trumpet ; JERRY MARTINI,sax ; PAT RIZZO,sax ; RUSTY ALLEN,bass ; ANDY NEWMARK,drums ; LITTLE SISTER,background vocals.
producer : SLY STONE
related website : 『 PhattaDatta.com - The true official website of Sly Stone of Sly and the Family Stone 』(公式サイト)、『 stonecisum.com :: Freddie Stone, co-founder of Sly & the Family Stone, Official Web Site 』(フレディー・ストーンの公式サイト)、『 Sly Stone's Lil Sis, Official Sly's Lil Sis Fan Site, The Family Stone 』(リトル・シスターの公式ファン・サイト?)




 マーヴィン・ゲイの'71年5月発表の傑作 『 WHAT'S GOING ON 』 (一体何が起こったって言うんだい)に答えるかのようなタイトル 『 THERE'S A RIOT GOIN' ON 』 (暴動が起きてるのさ)を冠したアルバムを、その年の10月に発表したスライ。しかし今度は逆に、マーヴィンの極めて私的な離婚問題をテーマにした作品 『 HERE, MY DEAR 』 よりも約5年も先に、自らの“薬物中毒克服記”的な作品を発表する。それが本作 『 FRESH 』 である。

 本作のサウンドは、真っ白な空間でスライがハイ・テンションに飛び跳ねてみせるジャケットと同様、その音が鳴っている背景がとても空虚な印象を受ける。湿り気を帯びた印象のある前作とは違い、とてもドライかつストイック、そしてタイトにシェイプ・アップされた演奏を展開しているのだが、“フレッシュ”とは言い切れないような、病的でどこか妙に白けた空気が漂っている。それは、薬物中毒から脱出できたものと思い込んでいるスライの“実情”と関係があるように思えるのだが。


(1)IN TIME  ▲tracks
 前作 『 THERE'S A RIOT GOIN' ON 【暴動】』 から2年の“時が経って(IN TIME)”、薬物中毒を(一応は)克服してリスナーの前に帰還したスライ。この(1)はその時点での心境を歌った曲。ドラッグ禍から抜け出して“フレッシュ”になったことを示す「コーク(コカイン)からペプシに切り替えた」という、シャレまで飛び出す。
 前作から引き続いてリズム・ボックスが使用されているのだが、これはスライが描いた「プログラムという“時間の中(IN TIME)”」のどの辺りに、今自分がいるのかを各々のプレイヤーが確認しながら演奏するためなのだろうか?
 タイトルとこのサウンドのことを考えていると、ついついそんなことまで浮かんでしまうのだけど、それを如実に物語るかのように、各々のプレイヤーがお互いの隙間を縫って絡み合い、与えられたスペースの中でストイックにキメていく。特に、休みを生かしたラスティー・アレンのベースと、ドラム・セットの中から的確な一撃を選って聴き手をはぐらかすようなアンディー・ニューマークのドラムのコンビによる“柔らかく鋭い”演奏が聴きモノ。そんな中で、時折スネアにシンクロし、ジャブのようなショットを放つギターがまたニクイ。とにかく、聴く度に発見があるトラックだ。
 しかし、最終的にはスライお得意のリズム・パターン“ダッター、ダッター、ダッター、ダッター”が顔を出してくる。


(2)IF YOU WANT ME TO STAY 【一緒にいたいなら】  ▲tracks
 この(2)で歌われる男女の別れは、いわゆる普通の“旅立ち”のための別れではない。では、その“旅立ち”とは何かと言えば、“麻薬中毒患者の更正施設への旅立ち”である。
 その哀愁に満ちたメロディーは悲痛ですらあるが、おそらく日本人なら、そしてまだファンクに馴染みの薄い人なら(1)よりもまずこの(2)に惹かれることだろう。この沈み込む感覚は結構クセになる。この曲も、スライお得意のリズム・パターン。
 “悲痛だ”とか“沈み込む”とかとてもネガティヴなイメージが濃厚な曲だが、メロディーがとてもキャッチーなせいか、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、エリック・ベネイ他、様々なアーティストにカヴァーされている。


(3)LET ME HAVE IT ALL  ▲tracks
 全体的にブルージーな雰囲気を持った(3)。短い曲ではあるが、繰り返しの中でアンサンブルの“濃さ”が増すと同時に、リズムの粘り気も増してくる。すると知らず知らずのうちに、こちらも段々と高揚感が強まってきてしまう。
 ここで歌われているのは、“恋人と再び一緒に暮らすことを夢見て、麻薬中毒から立ち直ろうとする決意”。落ちぶれた生活から這い上がり、真っ当な人間としての暮らしがしたいということがテーマ。


(4)FRISKY  ▲tracks
 エコーがかかったスライのヴォーカル、冷めたホーン・セクション、沈み込むベースというダークな雰囲気に満ちたこの(4)は、麻薬中毒の禁断症状との戦い〜ドラッグからの誘惑をテーマにした曲。
 「FRISKY」とは“跳ね回る”という意味で、ジャケットのジャンプした写真と繋がる気もするが、歌詞を読んでいるとどうやらドラッグの名前(もしくは種類)のことを言っているようだ。コーラス隊が「フリスキー・イェ・イェ・イェ・イェ」と連呼するのは、ドラッグの誘惑を表現していると思われる。
 オリジナル・ラヴが「ROVER」(『 風の歌を聴け 』 に収録)という曲でリズム・ボックスを使い、「FRISKY」という言葉も使っているが、ドラッグ的な意味合いはなさそうだ。


(5)THANKFUL N' THOUGHTFUL  ▲tracks
 麻薬中毒患者の更正施設での療養を終えて、真っ当な世界で再び生きていけることを感謝する(5)。しかし「まだ矯正するところはあるけど」という歌詞を反映するかのように、サウンドは身も心も弛緩したような超スロウなファンク。まだまだ病んだ匂いがプンプンする。


(6)SKIN I'M IN  ▲tracks
 微かに聴こえるリズム・ボックス、“ドッ・ドッ・ドッ・ドッ”というベース、そしてハイ・ハット音の連続の中に打ち込まれるバス・ドラムが、いつもよりドキドキと速い脈を打つ心臓を表現しているようなイントロ。そのあとに続く、ベッタリと粘りつくように張り上げるスライの声や哀愁を帯びたホーン・セクションと相俟って、何か得も言われぬスリルにゾクゾクとさせられる(6)。
 この(6)、ある時期までは「“輪廻”のことを歌っているのかな?」と思っていたのだが、本作をトータルで見た上で歌詞に目を向けると、どうやら微妙に違う意味合いを帯びてくるようだ。そうして見るとこの(6)は、「麻薬中毒から更正し、また人生をやり直すなら、これまでの自分と同じ“自分”として生きていきたい」、という歌であることが見えてくる。
 それにしても、この(6)のタイトル「SKIN I'M IN」という言葉ほど、スライという人間の思考性を象徴した言葉は他にはあるまい。“黒い肌をまとった外見としての自分”と“その中の自分”。後のアルバム 『 HEARD YA MISSED ME, WELL I'M BACK 』 のプロデューサーのクレジットに“SLY STONE & SYLVESTER STEWART(スライの本名)”と記すあたりにも言えることだが、彼は二重人格というよりは、“主観的な自分”と“客観的な自分”を常に意識している節がある。


(7)I DON'T KNOW (SATISFACTION)  ▲tracks
 自身の転落した人生の顛末(それは暗に麻薬に走るきっかけを示しているのかもしれない)を歌ったかのような(7)。
 左チャンネルからはヒタヒタと忍び寄るようなホーン・セクションが。右チャンネルからはゴニョゴニョと鳴るワウ・ギターが。そして、前のテイクの上に重ねたせいで消去しきれていないからだろうか、その右のワウ・ギターの遠くの方から微かにホーン・セクションが聴こえてくる。
 そんなこんなでアンダーグラウンドなムードが充満したサウンドに仕上がっているのだが、中でも傾聴すべきはやはりドラムとベースの絶妙のコンビネイション。さらにそのリズムにホーンのリズムがシンクロするあたりは“少し”鳥肌が立つ。


(8)KEEP ON DANCIN'  ▲tracks
 彼らのセカンド・アルバムのタイトル曲でもあり、スライが主張する一貫したテーマでもある「DANCE TO THE MUSIC」というフレイズが飛び出す(8)。しかし、ここではあの激しいビートの再現はなく、リズム・ボックスに乗せて“ドテステ”と屈折的なビートを聴かせる。 また、残響のかかったヴォーカル(コーラス含む)は、“生の喜び”を歌っているにもかかわらず何となく病的な印象すらある。「お前は全く素敵だよ、ヤクを打ったみたいに体中が痺れちまう」(訳:山本安見氏)なんて歌っているところを見ると、まだ心の、あるいは体のどこかに“その成分”が残っているのだろうか?


(9)QUE SERA, SERA (WHATEVER WILL BE, WILL BE)  ▲tracks
 “なるようになるさ”がテーマのスタンダード(9)。“失敗した人生でも、やり直せるかもしれない”との願いを込めての選曲かと思われる。どちらかというとリズムに重きを置いた本作にあっては、とても心に染み〜る一曲となっている。僕も大好きでついつい繰り返し聴いてしまう。
 しかし、リズム・ボックスをフィーチャーしたダウナーなバック・トラックや、徹頭徹尾個性を主張しないコーラス隊、それをバックに歌うスライの歌声はどこか病的だ。曲のメリハリということもあるし、以前からスライがやっている手法だということもあるのだが、平歌では静かに歌っているのに、サビになると突然、異常なまでに声を張り上げるところなど、ごくごく一般的なリスナーが聴いたら怪訝な顔をするだろう。


(10)IF IT WERE LEFT UP TO ME  ▲tracks
 スライお得意のリズム・パターン“ダッター、ダッター、ダッター、ダッター”が全面的にフィーチャーされた(10)。この曲も本作にあってはメロディーが印象的な曲。とは言っても、ほとんど同じメロディーの繰り返しで、3回に1回ほどオクターヴが上がって何となく盛り上がりが出る。また、あまりにも呆気ない終わり方が、聴く者をコケにしていて面白い。
 曲調から想像がつくかもしれないが、『 STAND!』 までではよく見られた、スライからリスナーへの「お前さんもやってみろよ」というポジティヴな励ましのメッセイジが復活している。そして、本作のコンセプトから鑑みてあえてその意味を狭く捉えると、“同じ境遇の薬物患者へのメッセイジ”とも取れる。
 しかし、歌うのは例の“個性を主張しないコーラス隊”──それがある意味不気味でもあり、“コーラス隊”としてはとても個性的なのだが──のみで、スライの声は遠くの方でシャウトやうめきのようなものが微かに聴こえる程度である。そんなところが本作の性質を象徴しているようでもある。


(11)BABIES MAKIN' BABIES  ▲tracks
 本作発表の後、間もなくスライの息子〜ブッバを生むことになる当時19歳の映画女優〜キャシー・シルヴァにインスパイアされて作ったという(11)。“まだ子供のくせに子供を産んでしまう”ということを嘆いているのだが、その父親はスライ自身でもある。最後の方に出てくる歌詞で、「お袋さんにも教えてやりな」の後の「ドラマーにもおしえてやりな」(訳:山本安見氏)とは一体どういうことなのかが、よく解からない。この曲を聴いていると、昨今のヤンキー夫婦による──だけとは限らないが非常に多い──児童虐待のニュースを思い出してしまう。
 それはさておき、サウンドの方は相当にタイトで引き締まっている。屈折感のあるベースとドラムのコンビネイションと、時折スネアの一撃とシンクロするピリッとしたトランペットが絶妙なグルーヴを紡ぎ出していく。微かにリズム・ボックスの音も聴こえるような気がする。とにかくクールな曲。
 因みに、ここで“ベイビーを生んだベイビー”〜キャシーは次作 『 SMALL TALK 』 のジャケットに登場する(ブッバも)。そしてその次作には、意外にもダン・ヒックスのバンドにいたシド・ペイジがヴァイオリンで参加している。


 彼のエッセンスを受け継いだミュージシャンは、洋楽ではマイルズ・デイヴィスやプリンス、P-ファンク(ファンカデリック、パーラメント他)の連中ほか数えない切れないほどいるが、日本では意外に少なく、曲単位でちょっとかじっている程度がほとんど。

 しかし、特に目立った例としてはスガ シカオがいる。彼の場合、自分のバンドに“ファミリー・シュガー(←スガ)”と名付けるほどの入れ込みよう。ツアー・T・シャツの柄は本作のジャケのパロディーだった。彼の1stアルバム 『 CLOVER 』 に収録の「IN MY LIFE」「黄金の月」といった曲はモロ影響下。“歌謡スライ”といったところか。


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