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artist : MILES DAVIS
title : 『 `FOUR' & MORE recorded live in concert 』
recorded date : 1964年2月12日 (Lincoln Center “Philharmonic Hall”, New York)
label : COLUMBIA
tracks ( cd ) : (1)SO WHAT (2)WALKIN' (3)JOSHUA / GO-GO (THEME AND ANNOUNCEMENT) (4)FOUR (5)SEVEN STEPS TO HEAVEN (6)THERE IS NO GREATER LOVE / GO-GO (THEME AND ANNOUNCEMENT)
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(3) / side B...(4)〜(6)
members : MILES DAVIS,trumpet ; GEORGE COLEMAN,tenor saxophone ; HERBIE HANCOCK,piano ; RON CARTER,bass ; TONY WILLIAMS,drums.
producer : TEO MACERO
related website : 『 Miles Davis.com 』(公式サイト)




 「その夜のオレ達の演奏は、まさに天井をぶっ飛ばしてしまいそうな勢いだった。みんなが、本当に一人残らず全員が、ものすごい演奏をした。曲はほとんどがアップ・テンポだったが、ただの一度も狂わなかった。ジョージ・コールマンも、この夜が最高だった。それに、バンドには創造的な緊張感が漲っていた」

 以上の発言はマイルズが自叙伝で語っていた言葉だ。それほどまでに、彼は本作の出来に満足していたのである。実際、超ハイ・テンションな場面の連続で、(6)以外の5曲は全てオリジナルの演奏をはるかに上回るハイ・スピードなアレンジになっており、マイルズもバリバリに吹きまくっている。そしてそれと並ぶ聴き所は、トニー・ウィリアムスの“タイトでありながらも変幻自在”な超絶ドラミングだ。この時、彼は18歳。ただただ驚くしかない。


(1)SO WHAT  ▲tracks
 彼の最高傑作との声も高い(僕も愛聴している) 『 KIND OF BLUE 』 からの(1)。緊張感たっぷりの出だしの後、原曲よりはるかに速いスピードでブッ飛ばす。
 切り込み隊長マイルズ。初めのうちはモードに則った演奏でスタートを切るも、次第に暗闇を切り裂く閃光の如きフリーな感覚になっていく。そして、そのバックで「ド・カ・ド・カ・ド・カ・ド・シャ〜〜〜ン」と鳴らされるトニー・ウィリアムスのドラミングと相俟って、まるで雷が落ちたような衝撃に見舞われる。この曲での彼はスリル満点なバス・ドラム・プレイを多用している。あまりのカッコよさに、白目がうっすら赤みを帯びてきそうだ。
 次のジョージ・コールマンのソロはモードに倣ったフレイジング。全編音を詰め込むということはなく、適度に空間を利用した演奏。ソロに入ってちょっといったの所(3分を越えたあたり)でベースのロン・カーターがルート弾きの連続から「ボヨ〜ン」と弾けて次の展開に移行する瞬間、スイッチを切り替えるようなトニーのスネアが「スタンッ」と絶妙のタイミングで打ってくる。もの凄いコンビネイションだ。思わず鳥肌が立つと同時に、ニヤリと笑みがこぼれてしまう。
 最後のハービー・ハンコックはいくつかのモチーフを元に、段々と発展させていくような展開を見せる。比較的“忙しい”ソロ。そのソロの最後の方でコードを「ガー・ガー・ガッ」と鳴らしているうちに、この曲のテーマ部分にそのまま突入。興奮しっぱなしの9分間がミステリアスな余韻を残して終わる。


(2)WALKIN'  ▲tracks
 同名のタイトルを冠した'54年の 『 WALKIN' 』 からの(2)は、マイルズのトランペットで切り裂くように始まる。あまりの速さのせいか、初めは探りを入れるかのように簡単そうなフレイズでしのぐマイルズ。しかし、それがまるでジャブをかましているかのようで、結構スリリング。ホンノちょっと休んだ後、態勢を立て直し色々なタイミングで次々とフレイズを繰り出してくる。
 トニーのドラム・ソロでスピーディーな時間は一時中断。それが明けてのコールマンのソロは、いかにもハード・バップな“詰め込み型”なソロ。
 続いてのピアノ・ソロは、一旦ビートが控えめになるものの、再びダッシュ。「ピロピロピロピロ」と全力疾走。


(3)JOSHUA / GO-GO (THEME AND ANNOUNCEMENT)  ▲tracks
 前年'63年のアルバム 『 SEVEN STEPS TO HEAVEN 』 からの(3)。ベースでスタートを切り、テーマに突入。このテーマもモードで作られている。
 マイルズのソロ。序盤は低い音をウロウロ。そこから段々と盛り上げていき、一気に駆け上がっていく様がなんとも爽快。
 次に控えるコールマンのソロは、かなり流麗な感じの中に時折スタッカートで屈折感を出してみたり、軍隊のラッパのようなフレイズを挿入してきたりする。
 ハンコックのソロでは、この高速の曲中で彼が繰り出すフレイズに対して、まるで彼の頭の中を覗いているかのようにトニーが同じリズムで呼応してくる場面もあり、かなりスリリング。
 最後は幾分お気楽なエンド・テーマ「GO-GO」をバックにメンバー紹介のアナウンス。


(4)FOUR  ▲tracks
 僕の好きなランバート,ヘンドリックス&ロス他、様々なジャズ・ミュージシャンにカヴァーされている(4)。自身の作品としては 『 BLUE HAZE 』 ('53年)と 『 WORKIN' WITH THE MILES DAVIS QUINTET 』 ('56年)の2枚のスタジオ・アルバムに収録されている。この曲も、ここでは相変わらずハイ・スピードなアレンジ。
 今にも弾けそうな躍動感溢れるドラムでスタート。マイルズの短めのソロの後、コールマンのソロ。そのスタートから少しいった所で、彼の流麗なフレイズの切れ目と、トニーのドラミングがピタリと噛み合う瞬間があり、鳥肌が立つ。マイルズの自叙伝によれば、トニーはコールマンの既成の枠からはみ出てこようとしないプレイを嫌っていたはず。なのにこれだけ息があってしまうのはやはり彼が天才だからか。
 明るく流麗ながらも、時折はみ出たセンスを見せるハンコックのソロが終わる頃、マイルズがほんの少し切り込んできて、テーマで終わる。


(5)SEVEN STEPS TO HEAVEN  ▲tracks
 ベースでスタートする(5)は、(3)同様 『 SEVEN STEPS TO HEAVEN 』 に収録のタイトル・チューン。
 マイルズのソロでの閃光のようなフレイズの合間を縫って鳴らされる、ハンコックのフレイズがまたカッコいい。トニーのドラミングも生き生きとしている。
 トニーのソロを挟んで、コールマンのソロがそれこそ階段を駆け上がるようにスタート。澱みなく繰り広げられるフレイズの嵐に圧倒されてしまう。終盤でテンポ・ダウンし、それを引き継ぐ形でのハンコックのソロ。
 その出だしはテンポを落としたり速めたりするのだが、その後はただ猛然とダッシュ。豪快にブッ飛ばす。
 最後のテーマ部分では、ほんの少しではあるが、トニーが曲の速度を普通の速度で刻むのと同時に、その速度の倍の速度感覚のフレイズを混ぜ込んでくる場面がある。このプレイは本作以外でも聴くことができる。彼はドラムン・ベース的な2重構造のリズム感覚を持ったドラマーなのだ。それは、彼がハイ・ハットによるバック・ビートをほとんど打たないことによって可能なことなのかもしれない。


(6)THERE IS NO GREATER LOVE / GO-GO (THEME AND ANNOUNCEMENT)  ▲tracks
 本作中一番遅く、リラックスした雰囲気の(6)は、'55年の 『 MILES 』 から。マイルズはミュートを付け、トニーはブラシを使用(途中からスティックに持ち換える)。
 しかしここでの彼らが一筋縄でいくはずもなく、マイルズは閃きに満ちたソロを展開。途中、バックがカーターのベースだけになり、トランペット・ソロ兼ベース・ソロ(?)のようになる場面もあり。
 ここではブルージーなソロで攻めるコールマン。そして、そんなコールマンとは対照的に、わざと外れた音を注意深く選んで混ぜ込んだような、美しさと不気味さが同居した不思議なソロを展開するハンコック。そのバックでは、トニーがタイトなドラミングを聴かせる。
 最後は(3)同様、エンド・テーマとアナウンスで終わり。


 それにしても本作にはなぜ、こんなにも“熱さ”が漲っているのか。その理由はマイルズの自叙伝によるとだいたいこんなことだそうだ。半分は冗談なのかもしれないが。

 このコンサートは元々、人種平等会議(CORE)と学生全国調整委員会(SNCC)がスポンサーとなって企画した市民権登録運動の慈善コンサートだったのだが、そのステージを踏む以前にメンバーの誰かが(その者の名誉のために、マイルズはあえて名を伏せている)「オレはマイルズほど稼いではいないから、ギャラをくれればその中から自分で好きなだけ寄付する」とゴネたため、バンド内で一悶着あり、その余熱が冷めやらずに皆カッカきていたので、多分その怒りが全員に火をつけて、バンドに緊張感が漲り、あの力強い演奏に繋がったのだろう、と。

 このコンサートが開催された経緯から、初めは「PROTEST」にも割り振ろうかと考えたのだけど、この“熱さ”の理由が理由だけに却下。笑。


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