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指揮の技術5、叩き
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指揮の技術5、叩き
打法

 それでは指揮がどうして拍を感じさせることができるのか考えてみましょう。
 指揮の動きを図形化してみました。


図1



 図1は指揮が一定の速度で延々と動き続けている図です。当然拍は判りません。
 この動きを平均運動と言います。
 音楽が流れていて、拍を打つことによって流れの妨げとなる場合、この指揮法は有効です。

図2



 図2は手が上に上がった状態で停止した後、下がって打点を打ちます。手が上がった後、いつ手が下がるのか予測がつかないので、拍を予測することは困難です。


図3

 

 図3は図が巧く書けていないので判りづらいかもしれませんが、放物運動です(そう思ってください)。
 点後の前で速度が弛むので、早い時点でテンポの予測がつきます。

図4



 図4は図3に似ていますが、下で拍のタイミングまで待っている図です。
 この指揮法を「先入」と呼びます。
 意図してこの指揮法を使っているならば結構ですが、多くの方が、裏拍で早く手が下がってしまったため、やむを得ず下で待つ結果になっていることが多いようです。
 図2と同様、テンポはよく判りません。
 不思議なことに大多数のアマチュア指揮者がこの方法で指揮をしています(特に合唱指揮者に多いようです)。
 また、図2と組み合わせた指揮をなさっていらっしゃる方も多くお見受けします。
 この指揮はテンポが判らないので、演奏が遅れがちになる傾向があります。しかし指揮者は自覚していないので、「テンポが遅れてる!」と怒鳴っている光景をよく見掛けますが、そんなことで怒られる演奏者こそいい迷惑です。

 以上の理由により図3の放物運動が拍を明示するのに最も適した運動です。この動きを「叩き」と呼びます。
 それではどうしたらこの動きを身につけられるのか考えてみましょう。

叩き1、脱力

 上でも説明したように「叩き」は放物運動です。ですから手を放り揚げて落ちて来るに任せ、途中で再び放り揚げる運動を繰り返せば、理想の叩きになります。
 放り揚げる運動は難しいので、まず最初に落下の運動を学びましょう。
 まず左手で右手を鼻の高さ程に持ち上げます。右手の肘は伸びきらない程度に前方(顔から30〜40センチ程度)へ突き出します。そして左手を外し、右手を落下させます。この時大切なことは、右手には一切、力を入れないことです。力が入っていなければ、落ちた右手は惰性で数度前後に揺れているはずです。私の場合ですと、6往復程度は揺れています。
 これで脱力は完成です。

叩き2、跳ね上げ

 手を下の位置(肘が下がって下膊が少し前に突き出された状態)に構えます。手に消しゴムなど床に落としても良いものを持ち、肘より先のみ、しかも手首の返しを使わずに顔の高さまで放り揚げてみてください。上膊(二の腕)が動いてしまう方は、机などに肘を固定して、下膊だけが動くようにしてください。
 次に下膊の動きができるだけ小さく済むようにしてください。おそらく5〜10センチ程度の動きで頭より高く上げられるはずです。
 この動きでは、手を数センチ上げた所で力を入れて腕を止めているはずです。
 今度は手に何も持たずに、今の放り上げる動作をした後、脱力してください。そのまま腕が上がるはずです。拳の高さが鼻の辺りまで上がる程度に力を加減してください。
 この時、拳が垂直に上がっているか確認してください。イメージとしては、拳を真上に放り上げ、それに腕が附いていく感じです。
 ここで重要なことは、小さく放り上げる運動をした後、惰性のみで拳が顔の高さまで上がることです。力を持続させて持ち上げてはいけません。
 うまく脱力できていれば、一度顔の辺りまで上がった拳は、上記の「脱力」の運動に繋がり、下まで落ちてぶらぶらするはずです。
 これで跳ね上げは完成です。

叩き3、跳ね上げ、脱力の連続

 上記の2つの運動を連続させてみましょう。
跳ね上げて、落とす、この動作を繰り返します。
 ここで注意して頂きたいのは、上空の折り返しの時、拳が完全に静止してしまわないことです。物理的には完全に停止する瞬間があるのでしょうが、指揮の場合、完全に停止すると、音楽が先へ行こうとする勢いを削がれますので、僅かで結構ですので動き続けていてください。これができないと上記「打法」の図2のようになってしまいます。
 これを避けるには、頂点で軽く逆U字を書くようにするのも良いかと思います。この時、拳は内側でなく、外側へ描くようにした方がうまくいきます。
 巧くできるようになりましたら、拳が落下してくる時、下まで落としてしまわずに、跳ね上げの位置まで拳が落ちた瞬間、また跳ね上げてみましょう。
 これが「叩き」です。
 巧く脱力ができていればM.M.=66(1分間に66回)程度になるはずです。
 この動きがスムーズにできるようになるには、毎日数10分の練習を積み重ね、青少年の方で約1年、成人の方ですと1〜2年程度で何とかなると思います。私は23歳で始めましたので、先生からお許しが出るまで1年半掛かりました。運動能力が極めて欠如した方ですと一生身に付かないかも知れませんが、「叩き」は極めて重要ですので、頑張って巧くできるよう練習してください。

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