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artist : SADISTIC MIKA BAND
title : 『 黒船 【BLACK SHIP】』
release : 1974年11月
label : 東芝EMI
tracks ( cd ) : (1)墨絵の国へ (2)何かが海をやってくる (3)タイムマシンにおねがい (4)黒船――嘉永六年六月二日 (5)黒船――嘉永六年六月三日 (6)黒船――嘉永六年六月四日 (7)よろしくどうぞ (8)どんたく (9)四季頌歌 (10)塀までひとっとび 【SUKI SUKI SUKI】 (11)颱風歌 【TYPHOON】 (12)さようなら
tracks ( analog ) : side A...(1)〜(6) / side B...(7)〜(12)
members : 加藤和彦 KATO kazuhiko,vocal,guitar ; ミカ MIKA,vocal ; 高中正義 TAKANAKA masayoshi,guitars ; 今井裕 IMAI yutaka,keyboards,saxophone ; 小原礼 OHARA rei,bass,vocal,percussion ; 高橋幸宏 TAKAHASHI yukihiro,drums,percussion.
producer : CHRIS THOMAS
related website : 『 TAKAHASHI YUKIHIRO 』(高橋幸宏の公式サイト。休止中)




 高校生の頃、ラジオで1〜2度「タイムマシンにおねがい」を聴いたことがあるだけで、サディスティック・ミカ・バンドについてはほとんど知らなかった僕が本作を知ったのは、『 宝島'92年No.240(2月24日号) 』 の「日本のロック歴史的名盤200選」という特集でだった。

 本作はそこで圧倒的な支持を得て1位になっていたので、「さぞもの凄い名盤なんだろうなぁ」と期待に胸を弾ませて聴いてみたのだが、その時は前述の「タイムマシンに〜」と「塀までひとっとび」といった乗りの良い曲を気に入ったくらいで、少々期待外れといった印象しか持てず、友人に売ろうとまで思ったのだが、どうにか思いとどまっていた。

 しかし、それから2〜3年後の、ブラック・ミュージックを好んで聴いていたある日にたまたま本作を引っ張り出して聴いてみたら、「こりゃぁ凄ぇ!」と興奮してしまった。ロックというよりは、ほとんどがよく練られたファンクだったからだ。そして、その他の曲もその頃の耳には全てO.K.になっていた。


(1)墨絵の国へ  ▲tracks
 江戸時代の平和な海の景色を思わせるようなサウンドと歌詞を持つ(1)。エレピとエレキ・ギターによるちょっと不思議感漂いつつも瑞々しいバッキングに乗せて、フラフラとした加藤和彦のヴォーカルが黒船の側からの視点で書かれた歌詞を歌い、その両脇から高橋幸宏のものと思われる歌詞の朗読(?)のようなものが続くという面白いアイディア。


(2)何かが海をやってくる  ▲tracks
 今度は黒船を待ち受ける日本人側からの視点に移して描いたインストゥルメンタルの(2)。
 EとFを繰り返すフラメンコ的なコード進行によって、刻々と迫り来る脅威に対する緊張感が伝わってくる。よく動くベースと切れのいいアクセントを付けるエレピが、かなりクロスオーヴァー期のフュージョン的だ。高中正義によるギリギリとしたレス・ポール(と思う)のリード・ギターもカッコいい。使うギターやフレイズからして何となくジェフ・ベックを意識しているのだろうか。最後にはパーカッションが若干フィーチャーされている。


(3)タイムマシンにおねがい  ▲tracks
 おそらくこのバンドの曲で一番有名な(3)。ミカがヴォーカルをとる最高にドライヴ感満点の R & R 。彼らの話の中に必ず出てくる“グラム・ロック云々”ということが、本作で唯一、音楽性そのもので納得できる、派手な曲。1拍“グッ”と溜め込んでから「さぁ〜〜不思議な夢と〜」と始まる辺りはインパクト十分。ブレイクしての間奏部分もかなりインパクトがあり、そこでの高中のカッティングがかなりファンキー(かつ結構難しい)。
 たぶん偶然だと思うが、歌詞の中に「ティラノザウルス」や「シルクハット」が出てくるのは、“グラム・ロック”という言葉を意識すると“T.REX”〜“マーク・ボラン”に引っ掛けているのかなとも思ってしまう。


(4)黒船─―嘉永六年六月二日  ▲tracks
 高橋幸宏がアンディー・ニューマークばりにクレバーなドラミングを聴かせるインストの(4)。9拍子といったらよいのだろうか、とにかく3拍子系のリズムでスリリングにファンクしている。小原礼とのコンビネイションも抜群だ。その変則的な屈折感は、『 FRESH 』 期のスライ&ザ・ファミリー・ストーンと 『 BLOW BY BLOW 【ギター殺人者の凱旋】』 前後のジェフ・ベックとの中間的な要素を感じさせる。こんな曲はたぶんロクシー・ミュージックにはできなかっただろう。
 正直言ってこの曲に夢中になっている間は“黒船”という言葉はどこかへ行ってしまっている。とにかくクールでカッコいい曲。だからこそ余計に、1分にも満たない演奏時間が惜しまれる。


(5)黒船─―嘉永六年六月三日  ▲tracks
 (4)からそのまま繋がる形で穏やかなピアノ曲になる(5)。それも束の間、すぐに(4)の曲調に戻る。しかし今度はリスナーにも聴きやすいようにするためか、3拍ごとにシンセかメロトロンのストリングスの音が挿入してある。
 しかしまたもや“それも束の間”、粘っこくアーシーなファンクに変化。ファンクの醍醐味である“各楽器が同時に音を出さないアンサンブル”の面白さを堪能させてくれる。止まっては進み、進んでは止まる屈折感のあるリズムがクセになる。


(6)黒船─―嘉永六年六月四日  ▲tracks
 雰囲気はガラリと変わって、穏やかで壮大なインストの(6)。静かなピアノをバックにヴォリューム奏法のギターがメロディーを奏でる導入部から、段々オルガンなどが加わり、穏やかだったギターが大らかに歌い壮大になってくる。この壮大さは黒船の“大きさ”であり、そしてその母国〜アメリカの“大きさ”でもあるように思う。


(7)よろしくどうぞ  ▲tracks
 ソウル・フラワー・ユニオンの別働ユニット〜ソウル・フラワー・モノノケ・サミットの先を行くこと20数年、チンドンの(7)。とは言ってもあくまで続くお祭り“どんたく”の導入部という意味合いのもので、ソウル・フラワー〜のような真摯な意味合いはない。


(8)どんたく  ▲tracks
 舞台を九州に移し、日本人も異人さんも老いも若きも“お祭り騒ぎ”な(8)。本作で僕が一番好きな曲だ。やっぱり“日曜日”にはよく聴いてしまう。
 シンプルながらもツボを心得たファンク・ビートを叩き出す高橋幸宏のドラムとボトムのしっかりした小原礼のベースという絶妙のコンビに、ワウワウ・ギターとクラヴィネットが絡み合った“軽ファンク”。さらに、朴訥この上ない加藤和彦のヴォーカルが乗っかって、ホノボノと楽しい曲に仕上がっている。
 「お祭り騒ぎぃっ!」と「それがどんたく」という間髪入れない“コール&レスポンス”(この場合“レスポンス&コール”だが)や、終盤の「それがどんたく・ッソッッ・ソッッソ」というリズム・アプローチが面白い。
 また、イメージ豊かな歌詞もいい。この曲以外でも本作のほとんどの歌詞を書いている松山猛という人は加藤和彦とよく組んでいた作詞家で、フォーク・クルセダーズ時代には「帰ってきたヨッパライ」の作詞もしている。またインストの曲にもクレジットされているところを見ると、歌詞だけでなくコンセプト・メイキングにも関っているのだろう。さながらキング・クリムゾンに於けるピート・シンフィールドのような役回りといったところか。


(9)四季頌歌  ▲tracks
 本作のコンセプトに適った、和風な雰囲気の(9)。寂寥感を湛え、今にも消え入りそうなか細い声で加藤和彦が歌う導入部から、一旦“ビニョ〜〜”というシンセ音と雷っぽい音だけの部分を挟んだ後に1音転調し、オルガンなどが加わってメジャーな展開に。そこでギター・ソロが高らかに歌い、壮大な曲の頂点に。その後もフルート系のメロトロンやピアノ、シンセが出てきて可憐で美しい日本の景色を想像させる演奏が続く。ある種、プログレ的な感覚で“和”を表現した曲。


(10)塀までひとっとび 【SUKI SUKI SUKI】  ▲tracks
 雰囲気はガラリと変わってアッパーでハイヤーなファンク・ナンバー(10)。ミカが(3)以来再び登場。“ミスター朴訥”な加藤和彦の歌声の代わりに、ダーティーでいわゆるロック的な部分を担っている。それにしても彼女の出番が少なすぎる。
 この曲もインスト部隊〜サディスティックスが大活躍。リズムにリードに活躍するギターと、クラヴィネットが加わったリズム隊が繰り広げるファンク大会。2コーラス目のブレイクに於ける、ベース2音とスネア1発がニクイ。また、そんなインスト部隊をバックに、「ハァッ!」という掛け声で煽りまくる後半部がとにかくカッコいい。その掛け声には、何か“和”のパワーみたいなものを感じる。


(11)颱風歌 【TYPHOON】  ▲tracks
 ギターとキーボードがメジャー感のある展開で広い空と巨大な雲を、そして腰の入ったリズム隊がグイグイと進む推進力を醸し出し、スケールの大きな演奏で颱風を表現した(11)。平歌や間奏部の前半は隙間を生かしたファンク。特に間奏部は幾分スペイシーなアレンジが施されたファンクになっている。


(12)さようなら  ▲tracks
 あまりの寂寥感に胸かきむしられる、フォーク調の(12)。加藤和彦のか細い声は、こういった曲調で絶大なる効果を発揮する。アコギのストロークが醸し出す虚空に、ユラリとたなびくような残響を置いていくエレキ・ギターがまた寂しげ。最後は何を表現しているのか、オルガンのコードが鳴り続ける中、切れ切れにエレキ・ギターが鳴らされ、次第にフェイド・アウト。これにて彼らの“日出づる国の開国絵巻”はおしまい。


 ケロッとしていて、オシャレなイメージが強い加藤和彦だが、本作は彼なりの宣戦布告なのではないだろうか。自分達を“黒船”になぞらえ、自分達の新しさや凄さを理解できない当時の停滞した音楽業界を“開国”しようとしたのではないだろうか?本作の面白さ・凄さを実感するにつれ、そう思わずにいられない。


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