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artist : THE CLASH
title : 『 SANDINISTA ! 』
release : 1980年12月
label : EPIC RECORDS
tracks ( cd ) : [DISC 1] (1)THE MAGNIFICENT SEVEN 【7人の偉人】 (2)HITSVILLE U.K.(3)JUNCO PARTNER (4)IVAN MEETS G.I. JOE 【イワンがG.I. ジョーに会う時】 (5)THE LEADER 【政府の指導者】 (6)SOMETHING ABOUT ENGLAND 【老いたイングランド】 (7)REBEL WALTZ 【叛乱ワルツ】 (8)LOOK HERE (9)THE CROOKED BEAT【歪んだビート】 (10)SOMEBODY GOT MURDERED 【誰かが殺された】 (11)ONE MORE TIME (12)ONE MORE DUB (13)LIGHTNING STRIKES (NOT ONCE BUT TWICE) 【ライトニング・ストライクス(電光一閃! おんぼろニューヨークを直撃)】 (14)UP IN HEAVEN (NOT ONLY HERE) 【ロンドン塔】 (15)CORNER SOUL (16)LET'S GO CRAZY (17)IF MUSIC COULD TALK 【もしも音楽が語ることができるなら】 (18)THE SOUND OF SINNERS

          [DISC 2] (1)POLICE ON MY BACK (2)MIDNIGHT LOG (3)THE EQUALISER 【平等】 (4)THE CALL UP (5)WASHINGTON BULLETS 【サンディニスタ!(ワシントンの銃弾)】 (6)BROADWAY (7)LOSE THIS SKIN (8)CHARLIE DON'T SURF 【ナパーム弾の星】 (9)MENSFORTH HILL (10)JUNKIE SLIP (11)KINGSTON ADVICE (12)THE STREET PARADE (13)VERSION CITY 【ヴァージョン・シティー列車】 (14)LIVING IN FAME (15)SILICONE ON SAPPHIRE (16)VERSION PARDNER (17)CAREER OPPORTUNITIES 【出世のチャンス】 (18)SHEPHERDS DELIGHT
tracks ( analog ) : side A...[DISC 1] (1)〜(6) / side B...[DISC 1] (7)〜(12) / side C...[DISC 1] (13)〜(18) / side D...[DISC 2] (1)〜(6) / side E...[DISC 2] (7)〜(12) / side F...[DISC 2] (13)〜(18)
regular members : JOE STRUMMER,guitar,vocals ; MICK JONES,guitar,vocals ; PAUL SIMONON,bass,vocals ; TOPPER HEADON,vocals,drums.
guest musicians : MICKEY GALLAGHER (IAN DURY & THE BLOCKHEADS),keyboards ; J.P.NICHOLSON,keyboards ; MARIA GALLAGHER,vocal 《[DISC 2] (6)》; TIMON DOGG,violin,vocal 《[DISC 2] (7)》; MIKEY DREAD,vocal 《[DISC 2] (14)》; LUKE GALLAGHER,vocal 《[DISC 2] (17)》; BEN GALLAGHER,vocal 《[DISC 2] (17)》; NORMAN WATT ROY (IAN DURY & THE BLOCKHEADS),bass ; ELLEN FOLEY,DAVID PAYNE (IAN DURY & THE BLOCKHEADS),sax ; RAY GASCONNE,BAND SGT.DAVE YETES,DEN HEGARTY,vocal ; GARY BARNACLE,sax ; BILL BARNACLE,trumpet;JODY WINSCOTT,IVAN JULIAN (RICHARD HELL & THE VOIDOIDS),guitar ; NOEL TEMPO BAILEY,ANTHONY NELSON STEELIE,LEW LEWIS,vocal,harmonica ; GERALD BAXTER-WARMAN,TERRY McQUADE,RUDOLF ADOLPHUS JORDAN,BATTERSEA.
producer : THE CLASH
version mixed by MIKEY DREAD.
related website : 未確認




 正直な話、本作を高校生ぐらいの時に聴かなくてホントに良かったな、と思う。もし当時聴いていたら、パンクやハード・ロックのような音楽ばかりを求めていた耳には本作の持つ多様な音楽性がうまく受け止められずに、それを機にず〜っと本作を“駄作”扱いして聴かずに過ごしていた可能性があったかもしれない。

 いや、厳密に言えば本作のうち2曲 《[DISC 1] (1)、[DISC 1] (10)》は2枚組のベスト盤 『 THE STORY OF THE CLASH 』 で高校生の頃既に聴いているはずなのだが、殆ど記憶に残っていなかった。ベストの [DISC 2] のストレイトな“いわゆるパンクな時期”の曲ばかり聴いていたからだ。

 しかし、それから約10年前後して本作を聴いた時 (その時はアナログ盤だった) の衝撃と言ったら!「こんなに面白いアルバムだったなんて!」と狂喜乱舞したものだ。...いや、“乱舞”はしなかったかな...。とにかく、オドロキだった。イアン・デューリー&ザ・ブロックへッヅの「INBETWEENIES」 (『 DO IT YOURSELF 』 に収録) やローリング・ストーンズの「MISS YOU」 (『 SOME GIRLS 』 に収録) のようなちょっと憂鬱でクールなホワイト・ソウル/ファンクや、多様な音楽性を包括したグループ/アルバムに興味を持つようになっていたその時の耳には。


[DISC 1] (1)THE MAGNIFICENT SEVEN 【7人の偉人】  ▲tracks
 そして、そんな衝撃は出会い頭の [DISC 1] (1)でいきなり訪れる。出だしの「ダタタタ・タタタタ・ダッッタ・タッ」というスネアの連打はインパクト十分。聴き手を煽るようなハンド・クラップ。それ程巧くはないが耳に残るベース・ライン。ちょっとラップっぽい (カッコいいのは確かだけど、ラップとしてこなれた感じはしない) ジョー・ストラマーのヴォーカル。それらをヒンヤリと、そして柔らかく包むようなキーボード。当時求めていたサウンドにストライク。踊れりゃいいだけの脳天気ディスコや、もはや食傷気味のフリー・ソウル、そのどちらとも違う“棘もあり陰もある”ブリティッシュ・ファンク。後でベスト盤の曲目を見たら、この曲が [DISC 1] の1曲目だった。この音に何も感じないなんて、どういう感性をしてたんだろ。当時の我が耳は。


[DISC 1] (2)HITSVILLE U.K.  ▲tracks
 「これからゴスペルでも始まるのかな?」と思わせつつもシャッフル感のないモータウン・ビートになる [DISC 1] (2)。女性コーラスも入って、とてもポップでドリーミーな仕上がり。お気に入りのテープやCDを作る時に、シャッフル系のリズムの曲からスクウェアなリズムの曲に繋ぐにはもってこいの曲だと思う。でも、もろに昔のモータウンの曲じゃ音像が合わないから、同時代に出た曲と繋ぐのが無難かな。因みに、モータウンのシングル曲を4枚のCDに収めたボックス・セットのタイトルが 『 HITSVILLE USA 』 。この曲は、その“HITSVILLE (数々のヒット曲=モータウン) ”がイギリスの少年少女の心をヒット (襲う=魅了) していく様を描いた曲。


[DISC 1] (3)JUNCO PARTNER  ▲tracks
 ジョー・ストラマーのおどけた歌いぶりと、ヘロヘロしたタイモン・ドッグのヴァイオリンが歌詞の情けなさにピッタリとマッチした [DISC 1] (3)。元々はニュー・オーリンズの R & B なのだそうだが、ここではレゲエにアレンジしている。この曲はジョー・ストラマーがクラッシュの前にやっていたバンド〜101ERS(ワン・オー・ワナーズ)時代からのレパートリー( 『 ELGIN AVANUE BREAKDOWN 』 に収録)。 [DISC 2] (16)はこの曲のダブ。


[DISC 1] (4)IVAN MEETS G.I.JOE 【イワンがG.I. ジョーに会う時】  ▲tracks
 インベーダー・ゲーム (ここでは敢えて“インヴェイダー”ではなく、ある種の郷愁を込めて) 等のS.E.をフィーチャーした [DISC 1] (4)。イワンがソ連 (当時) でG.I. ジョーがアメリカ。それらが出会う時、S.E.が「ピュンピュン」。意味深だが、今日では両国はすっかり仲良しになり、今度は...。ま、お分かりだろう。で、曲調は危機感を表現するかのような幾分アップ・テンポの“ブリティッシュ・ファンク”。終わり方は終末感漂うダビーな処理。


[DISC 1] (5)THE LEADER 【政府の指導者】  ▲tracks
 深刻なネタの後なのにノリノリのロカビリーの [DISC 1] (5)。ここでも政治ネタ。「彼らってホント政治ネタが好きなんだなぁ」と思ってしまう。ま、アルバム・タイトルからしてそっち方面なのだから当然といえば当然。しかし、もしかすると彼らはただの照れ屋なだけなのかもしれない。


[DISC 1] (6)SOMETHING ABOUT ENGLAND 【老いたイングランド】
[DISC 1] (7)REBEL WALTZ 【叛乱ワルツ】  ▲tracks
 ホームレスの老人に戦争の話を聞かされるという設定の [DISC 1] (6) (ここでアナログ盤A面終了) の次は、ちょっとトラッドっぽいワルツの [DISC 1] (7)。チェンバロや、リバーブ&ディレイ深めのユルユルのギター&トロンボーンを使った長めのイントロが綺麗で、とても印象的。アナログ盤ならここで裏返してB面なのだが、ちょっと一息あった後でこんなイントロに出迎えられたら、ホントなごむだろうなぁと思う。こういう曲にスティール・ドラムや鉄琴 (鼓笛隊で使われている“ベルリラ”とかいうヤツかな?) を持ってくるというのもニクイ。隠し味としてチープな音色のオルガンも使われている。全体的にダビーな雰囲気。


[DISC 1] (8)LOOK HERE  ▲tracks
 そしていよいよ僕が大好きな、“ハイパー・ロカビリー”という感じのジャジーな [DISC 1] (8)。このドラムのスリルといったらない!他ではこのようなリズム・パターンにお目に...いや、“お耳に”かかったことがない。ドラム、ベース、ピアノ、木琴 (かな?) 等はジャズっぽいのに (元々はモーズ・アリスンというジャズ・ピアニストの曲だからジャズなのは当然なのだけど。彼の'64年のアルバム 『 THE WORD FROM MOSE 』 に収録)、ロカビリーなギターとブルージーなハーモニカ (奏者はおそらくルー・ルイス) が入ることによって、“ハイパー・ロカビリー”という感じに仕上がっている。ブランキー・ジェット・シティにもこういうリズムで何か1曲作って欲しかった。中村達也がこのリズムを叩いたら、また一味違ったカッコよさが生まれそうな気がする。


[DISC 1] (9)THE CROOKED BEAT 【歪んだビート】  ▲tracks
 ダブの [DISC 1] (9)。ヘッドフォンで聴くことをオススメしたい。曲の中盤から終わりにかけてが特にいい。色々な音が次々と脳味噌の中で鳴り響いてくる。


[DISC 1] (10)SOMEBODY GOT MURDERED 【誰かが殺された】  ▲tracks
 “いわゆるパンクな時期”のクラッシュのファンにも気に入られそうなアップ・テンポの [DISC 1] (10)。彼らが得意とする“勇ましいのにどこか哀愁のある”曲調。かなりキャッチーなだけあって前述のベスト盤にも収録されている。


[DISC 1] (11)ONE MORE TIME
[DISC 1] (12)ONE MORE DUB  ▲tracks
 前曲の勢いを打ち消すかのような、ゲットーの悲惨さを描いたマイナー調の沈鬱なレゲエ [DISC 1] (11)。そして、そのタイトル通りに“もう一回”とばかりに出てくる、そのダブの [DISC 1] (12)。ヒンヤリと沈んだ中にもどこか“尖った何か”が漂う感じだ。


 アナログ盤はここで1枚目が終了。トイレにでも行ったりして気持ちも新たに2枚目突入。


[DISC 1] (13)LIGHTNING STRIKES (NOT ONCE BUT TWICE) 【ライトニング・ストライクス(電光一閃! おんぼろニューヨークを直撃)】  ▲tracks
 ちょっとした会話の後始まる、リズム・パターンに若干ヒネリを効かせたファンク・チューン [DISC 1] (13)。ジョーの少し拙いラップが再度登場。ニュー・ヨークのことを歌うにはラップが最適と考えてのためか。音楽的興味だけではない配慮が窺われる。


[DISC 1] (14)UP IN HEAVEN (NOT ONLY HERE) 【ロンドン塔】  ▲tracks
 前曲の終わりの方で歌詞にロンドンのことが出てきたのを受けて、行頭に「THE TOWERS OF LONDON」と出てくる [DISC 1] (14)。昔ながらのクラッシュらしくポジティヴな曲調。一旦フェイド・アウトするかに思わせて、再度ヴォリュームが上がってくる時に聴こえてくる金属音のようなものは何なのだろうか。ロンドン塔のエレヴェーター (そもそもロンドン塔にエレヴェーターが有るかどうかも僕は知らないのだが) の動く時の音か何かなのだろうか?


[DISC 1] (15)CORNER SOUL
[DISC 1] (16)LET'S GO CRAZY  ▲tracks
 アコーディオンまで入っているレゲエの [DISC 1] (15)の後、カリプソの [DISC 1] (16)。歌詞カードのイラストにある通り、スティール・ドラムまで入っていてとても楽しい曲。歌詞は相変わらず政治ネタだけど、この際はタイトルの「LET'S GO CRAZY」の一言で楽しく盛り上がった方が◎。大好きな1曲。


[DISC 1] (17)IF MUSIC COULD TALK 【もしも音楽が語ることができるなら】  ▲tracks
 歌が左右のチャンネルに分かれて歌われるメロウなレゲエの [DISC 1] (17) 《[DISC 2] (14)はそのダブ》。歌詞カードも左右に分かれている。高橋健太郎氏のライナーによれば、これはレゲエDJのスタイルにヒントを得たようなのだが、僕はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「THE MURDER MYSTERY」 (『 THE VELVET UNDERGROUND (いわゆるIII) 』 収録) や、ビートルズの「I'VE GOT A FEELING」 (『 LET IT BE 』 収録) を思い出してしまった。両曲共、同じバック・トラックに乗せて左右別のパフォーマンスが進行していく曲だから。でも、そんなことは気にせずに、ユッタリ楽しみたい1曲でもある。全編にフィーチャーされたサックス (ゲイリー・バーナクルという人が吹いていると思われる) と、サラサラとした効果音 (というかパーカッションの一種?) がとても涼しげでいい。


[DISC 1] (18)THE SOUND OF SINNERS  ▲tracks
 最初「ロカビリーかな?」とも思ったが、歌詞を読むとどうやらゴスペルらしいことが分かってくる [DISC 1] (18)。聴いて行くうちにそれらしいピアノやオルガンやコーラスが入ってきて、段々と盛り上がっていく。最後に牧師のお話か何かが入って終わる。でも、ジョーの声ってあまりゴスペル向きじゃない気がする。この声で3コードなら、やはり R & R を想像してしまう。イイ曲だけど。


 CDは、ここでやっと [DISC 1] が終わり。CDの単位で聴いてきた方は、ここでちょっとブレイクしてから [DISC 2] に突入。


[DISC 2] (1)POLICE ON MY BACK  ▲tracks
 メチャクチャにクラッシュらしく、思わず熱くなってしまう [DISC 2] (1)。しかし、これは意外にもカヴァー曲。元々は、作曲者の黒人アーティスト〜エディー・グラントが在籍していたイギリスの“イコールズ”というグループの曲。原曲を未聴の僕が言うのもなんだけど、完全にクラッシュの曲になっている感じがする。それにしても、彼らの選曲のセンスというのもスゴイ。「よく、こんな曲見つけてくるなぁ」と、半ば呆れてしまう。


[DISC 2] (2)MIDNIGHT LOG
[DISC 2] (3)THE EQUALISER 【平等】  ▲tracks
 ロカビリーの [DISC 2] (2)の次は、ダブの [DISC 2] (3)。ウェイラーズのピーター・トッシュの歌に「EQUAL RIGHTS 【平等の権利 】」 (『 EQUAL RIGHTS 』 収録) というのがある。「平和なんか要らない。平等の権利と正義が欲しいだけ」と歌っているのだが、この [DISC 2] (3)もそれにシンクロしているかのような歌詞だ。それにしても、ダブのトび具合がスゴイ。


[DISC 2] (4)THE CALL UP  ▲tracks
 前曲の終わりの「だから戦争へは行くな」という歌詞を受けてか、「召集に応じないのは、君の自由なんだ」という歌詞で呼応する沈鬱なファンク [DISC 2] (4)。「育てられた通りに行動するのはやめるべきなんだ」という歌詞のその結果は、今の日本ではどんどんネガティヴな方向で噴出してきているような気がする。


[DISC 2] (5)WASHINGTON BULLETS 【サンディニスタ!(ワシントンの銃弾)】  ▲tracks
 マリンバのカワイイ響きが印象的な、カリプソ・ファンク (?何じゃそりゃ?) とも言えそうな [DISC 2] (5) 《[DISC 2] (15)はそのヴァージョン》。こんなにユッタリほのぼのとした曲なのに、歌われているのは悲惨な現実。でも、こういった曲調に乗せて歌われると、かえって冷静に、そしてシミジミと考えさせられてしまう。因みにここに出てくるヴィクトリア・ハラとは、ソウル・フラワー・ユニオンがカヴァーしていた「平和に生きる権利」 (『 ELECTRO ASYL- BOP 』 に収録) という曲を作ったチリの人 (そこでの表記は“ヴィクトル”・ハラ) 。彼は政治的なことで逮捕され、両手を砕かれた上に銃殺された。


[DISC 2] (6)BROADWAY  ▲tracks
 前曲の後だとやたらグッとくる、愁いを帯びたジャジーなレゲエ [DISC 2] (6)。曲調もそうだけど、歌詞も遣る瀬無い。歌詞を読む前はただの“いい感じの曲”だったのに、歌詞を一度読んでしまうと、まるで違った感情・印象が生まれてしまう。それでもやっぱり大好きな1曲。因みに、エンディングで歌うマリア・ギャラガーはおそらくキーボードのミック・ギャラガーの子供。


 アナログ盤はここで2枚目終了。ようやく3枚目。何なら続きは後日にでも...。


[DISC 2] (7)LOSE THIS SKIN  ▲tracks
 雰囲気はガラリと変わって、明るいトラッド調の [DISC 2] (7)。 [DISC 1] (3)でもヴァイオリンを弾いていたタイモン・ドッグの作。もちろんせわしないヴァイオリンも、そして痙攣したような歌も彼女。ブリティッシュ・バンドとしてのこだわりか、間奏やエンディングにかけてバグパイプが入ってくる。


[DISC 2] (8)CHARLIE DON'T SURF 【ナパーム弾の星】  ▲tracks
 エレクトリック・シタールの涼しげなフレーズが印象深い、ユッタリした R & R の [DISC 2] (8)。モロに海を想像させるサウンド。パンク・ロックというと、声高にメッセージを発したり、フラストレイションのはけ口に終始して、機能的な音楽を否定しがちだけど、クラッシュの場合こういっ た“聴いていて気持ちいい”という部分も忘れていない所がいい。因みにソウル・フラワー・ユニオンがアルバム 『 ラヴ・プラス・マイナス・ゼロ 』 でこの曲をカヴァーしている。


[DISC 2] (9)MENSFORTH HILL
[DISC 2] (10)JUNKIE SLIP   ▲tracks
 何やら混沌としたサウンドの [DISC 2] (9)は、 [DISC 1] (6)を逆回転したものに様々な会話をコラージュしたり、TB303 (らしい) のビニョビニョした音を被せたりした実験的作品。というか、ただのお遊びだったりして。高橋健太郎氏がライナーで“「ジャンキー・スリップ」という曲は”と書いている部分は、明らかに「メンズフォース・ヒル」の誤り。「ジャンキー・スリップ」は次の曲 《[DISC 2] (10)》で、ジャンキーの禁断症状を歌っている模様。


[DISC 2] (11)KINGSTON ADVICE
[DISC 2] (12)THE STREET PARADE
[DISC 2] (13)VERSION CITY 【ヴァージョン・シティー列車】  ▲tracks
 ジャマイカの現状を歌ったと思しき [DISC 2] (11)、珍しくラヴ・ソングな [DISC 2] (12) (アナログ盤はここでE面終了) というレゲエのようなロック (ロックのようなレゲエ?) の後で、僕の好きな“ブリティッシュ・ファンク”の [DISC 2] (13)。前にもちょっと触れたけど、ローリング・ストーンズの「MISS YOU」等と続けて聴きたい曲。沈鬱な雰囲気のサウンドの割には、ちょっとポジティヴな歌詞。暗闇の中に一条の光を見出していこうとするような。その歌詞の中には、“ギブソン街”、“フェンダー村”、“メッサブギー牧場”等といった、ちょっとした遊び心も見え隠れ。何となく小林旭の「自動車ショー歌」 (『 アキラ4〜ユーモア・ソング集 』 に収録) を思い出してしまった。


[DISC 2] (14)LIVING IN FAME
[DISC 2] (15)SILICONE ON SAPPHIRE  ▲tracks
 ここからはサービス的な意味合いなのか、ヴァージョンが殆ど。とすると、前曲のタイトル「VERSION CITY」というのは“ヴァージョン街”という意味で、ここからのアルバム構成に引っ掛けた言葉なのかもしれない。 [DISC 2] (14)は [DISC 1] (17)のダブでマイキー・ドレッドのヴォーカルが入る。 [DISC 2] (15)は [DISC 2] (5)に電子音や声が入ったものだが、トラックがシンプルになった分、ベースの音が目立つようになり、よりファンキーな感じになった感じ。


[DISC 2] (16)VERSION PARDNER
[DISC 2] (17)CAREER OPPORTUNITIES 【出世のチャンス】  ▲tracks
 [DISC 1] (3)のダブ [DISC 2] (16)の次は、おそらくキーボードのミック・ギャラガーの子供達と思しきルーク&ベン・ギャラガーが歌う、セルフ・カヴァーの [DISC 2] (17) (オリジナルは 『 THE CLASH 【白い暴動】』 に収録) 。拙い歌い方に思わず笑いがこぼれる。チェンバロらしき楽器が入って、とてもほのぼのとしてドリーミー、そしてキャッチーな仕上がり。


[DISC 2] (18)SHEPHERDS DELIGHT  ▲tracks
 そして最後は、出だしでちょっとライ・クーダー的なギターがレゲエと巧くマッチした [DISC 2] (18)。井出靖のダブ・アルバム 『 LONESOME ECHO 』 は、意外とこんな所からヒントを得たのかもしれない。それにしても、初めから聴こえる猫の鳴き声のような「ニャー」という声は何を意味するのだろうか。不気味に崩壊するようなエンディングも解せない。


 キャプションにも書いたけど、全体的にヒンヤリしたミックスなので、政治的云々を別にすれば意外と夏向きのアルバムではないだろうか。アルバム全部を真剣に聴くのもいいけど、ドライブしながら聴くのも一興かも。ダブの曲なんかでは車の中を色んな音が駆け巡ったりして...。ちょっと危険かな?くれぐれも事故らぬように!

 長の御清聴ならぬ、“御清読”ありがとうございました。


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