第七章 〜フルテン〜
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もうすぐ高校2回目の夏休み。この町にもお祭りはある。方舟のために出来たから伝統的なお祭りは無いけれど、隣り町のお囃子の人たちが来たり、町が作った方舟について歌った音頭も流れる。子どもの時はお祭りで踊らされたっけ。いつきは今まで参加したことが無いと言っていたので今年は、二人で回ろうと思う。そしてもう朝からだいぶ暑い季節になってる。ヘルメットなんかかぶりたくないのに、クセで何も考えず、玄関のヘルメットをかぶり、母さんに声をかけて学校へ行く。
「じゃぁ行ってくるね」
「いってらっしゃい、聞いたわよ、渡辺工場長の息子さんと仲良くなったんだって?そういう事は私たちにちゃんと言いなさいよ、すごいいいじゃない、将来は工場をしょって立つ息子になってくれるのかしらね。父さんも喜んでるわよ。」
って毎日のように言ってくる。そりゃそうだと思うけど、いつきの父さんとも会ったことないし、それにいつきの今の気持ちを聞いたら倒れるかも知れない。まさか東京へ行こうと思ってるなんて・・・・。校門へ近づいていくと、いつきが待っていた。珍しい、いつも下駄箱のところにいるのに。いつきがこっちを見ながら何か言いたそうにしているのが分かって、駆け足で向かった。
「おい、知ってるか?今日、転校してくるヤツいるみたいだぞ!昨日、警備員の人に聞いたんだ。方舟に新しいエンジニアが入るんだけど、子どもがいるみたいなんだ。しかも同い年!さっき職員室通った時に先生が話してるのを聞いたんだ、せいたろうのクラスみたいだぞ。」
「そうなの?もうすぐ夏休みになるのに、こんな時期に転校してくるなんて変わってるなぁ。」
「ここより田舎なんて町はまずありえないだろ、だからさ、絶対音楽についても詳しいと思うんだ。もしかするとピストルズ好きかも知れないしさ!そしたら絶対バンドに誘うんだ。いやもしかするとパンクスかも知れないなぁ。本当に楽しみだよ。」
「だといいけどね。僕としてはそっちの方が助かるよ、やっぱり何回考えても僕がバンドなんかやっぱり合わないよ。」
「ははは、なに言ってんだよ、俺の中ではさ、せいたろうはギターボーカルって決まってんだ。あとは、サブギターかドラムなんだよ、すっげぇリズムやってくれるヤツ探さないとな。」