小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第七章 フルテン

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第七章 〜フルテン〜
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第七章 ~フルテン~

あれからのいつきといったら、それは凄かった。通学用のヘルメットにセックスピストルズのステッカーを貼って学校へ登校してきた。ほとんどは僕と同じ反応。でも意外とピストルズは有名らしくて、何人かの生徒は知っていた。僕が音楽音痴だったみたい。

ヘルメットにシールを貼る生徒は他にもいたけど、いつきの場合は、さすがに先生に止められてた。でもいつきは取らなかった。そんな時、いつきの立場は凄い有利だ。工場長の息子というだけで、セックスという部分を取るという条件で、なんとか許された。そんなのってあると思う?そのあと、今度はクラスで告白。いや、自分から告白した訳じゃなく、いつきはもう変わってた。いつもいる取り巻きの反応ったら凄かった。「いつき君、やっぱりそうだと思ってた!」とか、女子は「いつき君って音楽好きなんだね、知らなかった。今度聴かせてくれない?」とか、相変わらずコビを売るんだけど、内心は皆ついていっていないのが、誰から見ても明らかだった。

でもいつきは晴れ晴れしてた。おかしな言い方だけど、皆がする、普通の笑顔をしてた。・・・普通?そう、普通の。もう、あの吸い込まれそうな深いブラックホールみたいな目はしていなかった。でも変わりに、青いような黒いようなビー玉みたいな目に変わった。本当のいつきの目に変わったんだ。

それで、僕と常に一緒にいるようになった。いつきが変わった反応よりも、僕といつきが一緒にいる方が、周りの反応は凄かった。だって、前の日まで一緒にいたことが無い、話してるのも見たこと無い二人が楽しそうに話しているんだ。この町で知らない人がいない工場長の息子いつきと、目立たない、友達という友達もいない、この僕が一緒にいるようになったんだから。そして初めて、親友が出来た日でもあった。2年生へ進級したあとも、やっぱりいつきとは違うクラスだった。

いつきは1組、僕は2組だ。相変わらず毎日同じような会話をして同じように過ごしていた。

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