小説

著:やまももけんじ

『 方舟がキミを運ぶね 』

第六章 noa's child

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第六章 〜noa's child〜
P.6 

言葉が出てこない。もっと色々と聞きたいことだらけなハズなのに言葉が出てこない。でも、いつきに対しての怒りも、不思議だけど、無くなってた。僕がいかに子どもで生きてきたのか恥ずかしかった。将来?そんなのまだ考えたことも無い。両親が死ぬ?想像も出来ない。横に座っているいつきを見ることは出来ない。気付いたらまた鉛筆で地面をほじくってる。

「渡辺くんさ、・・・いや、いつき。いつきさ、僕、思うんだ。いつきの父さんって、方舟も含めて家にしてるんじゃないかって。あの方舟で働いてる人たち全員が家族なんだよ。きっと。だからいつきを紹介するし、家の中を知っておくのは当然だろ?それに方舟で働いてる人が町に溢れてるのに文句は聞かない。僕の父さんだって、母さんだって方舟で働いて知り合って、僕が生まれた。あの工場が無かったら、出稼ぎで来た父さんに、隣町の母さんが会う訳なかったんだし、僕が生まれることも無かった。確かに聞いてるとおかしい所もあるけど、全部いつきを想ってのことじゃないのかなって思うんだ。・・・よくわかんないけど・・・。」

「両親が方舟で知り合って、せいたろうが生まれたのか・・・ほら、俺の言ったとおりだ。せいたろうは方舟の子、本当のアダムだろ?はは」

地面を掘ってたいつきが立ち上がる。首を回しながら、お尻のススを叩く。

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